吉田 健史
近畿大学医学部附属病院がんセンター緩和ケアセンター・腫瘍内科兼務
近年の分子標的薬や新たな制吐剤の導入により,ほとんどの抗がん剤治療は外来での施行が可能となり,患者は日常生活を維持しながら長期の生存が可能となってきた。このような現状のなかで「診断時からの緩和ケア」を実践することは,長期間にわたって抗がん剤治療と緩和ケアを併用することに他ならず,がん治療および緩和ケア双方の医療者にとって,これまで以上に互いの領域の理解とさらなる連携が必要となる。最近ではどのように腫瘍学と緩和ケアを統合していくのかが議論となると同時に,腫瘍内科と緩和ケアの両者を専門とするpalliative oncologistという概念も生まれ,今後ニーズが高まることが期待されている 1, 2)。日本では地方を中心に腫瘍内科医・緩和ケア医ともにマンパワーが不足しており,以前から内科医や外科医がpalliative oncologistの役割を担ってきた現状がある。一方で,大学病院やがんセンターなどのがん専門施設においては現在でも腫瘍内科と緩和ケア両者に従事する医師は少ない。