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のぞいてみよう!国際学会最前線 10
アットホームな雰囲気でがん支持療法を学ぶ

のぞいてみよう!国際学会最前線 10
アットホームな雰囲気でがん支持療法を学ぶ

学会名: 2017 MASCC/ISOO Anuual Meeting on
Supportive Care in Cancer
開催日:2017年6月22日~24日
開催地:ワシントンDC


堀江良樹
聖マリアンナ医科大学腫瘍内科


がん治療医であれば,発熱性好中球減少症(FN)や抗がん剤治療に伴う予防的制吐療法のエビデンスを学ぶなかで,必ず「MASCC(The Multinational Association of Supportive Care in Cancer)」のガイドラインに出会うでしょう。しかし,学会の名前は聞いたことはあるが,実態はよく分からない……という方は意外と多いのではないでしょうか。今回,昨年の2017年6月22日から24日まで,アメリカはワシントンDCで行われた「2017 MASCC/ISOO Annual Meeting on Supportive Care in Cancer」での経験を報告します。

えびでんす・あれんじ・な~しんぐ(EAN)骨転移 ─骨転移の疼痛に対する患者教育<10>

中野真理子(順天堂大学医学部附属順天堂医院)


がんの骨転移は,骨関連有害事象(SRE:Skeletal Related Events 骨痛,可動域制限,高カルシウム血症,病的骨折,脊髄あるいは神経根圧迫,骨髄浸潤など)の発生,骨折や骨折予防のための活動制限による生活の再構築など患者のQOL 低下に直結します。特に骨転移の疼痛は,コントロールが難しい症状の一つといわれています。

落としてはいけないKey Article 21
ハロペリドールで緩和できない過活動型せん妄にベンゾジアゼピンを使用することは適切らしい

森田 達也(聖隷三方原病院 緩和支持治療科)


【今月のKey Article】
Hui D, Frisbee-Hume S, Wilson A, et al:Effect of lorazepam with haloperidol vs haloperidol alone on agitated delirium in patients with advanced cancer receiving palliative care:a randomized clinical trial. JAMA 318(11):1047-1056, 2017. doi: 10.1001/jama.2017.11468

今号は,せん妄にはベンゾジアゼピンは使わないほうがいい,といわれつつも,そうはいっても患者が眠れないので併用はしてるよなあ……というところの悩みに手をつけた比較試験(の予備試験)をみてみます。

緩和ケア口伝―現場で広がるコツとご法度(21)
がん浸潤に伴う外陰部の接触痛にリドカイン・プロピトカイン配合クリーム

塚原 嘉子
(信州大学医学部麻酔蘇生学教室)
間宮 敬子
(信州大学医学部附属病院信州がんセンター緩和部門)


● がん浸潤に伴う外陰部の接触痛は,座位や排泄などの日常動作で増悪し生活の質を低下させる。
● 清潔保持が困難な部位であり治療に難渋する
● リドカイン・プロピトカイン配合クリームの併用で鎮痛効果を高める可能性がある

緩和ケア口伝―現場で広がるコツとご法度(21)
がん患者でも起きる「筋筋膜性疼痛」とそのマネジメントのコツ

石木 寛人
(国立がん研究センター中央病院 緩和医療科)


● 「全身あちこち痛い」は筋筋膜性疼痛のサイン。
● 筋肉内の索状物とそれに一致する強い圧痛。あると思って丹念に身体診察する。
● 内服薬よりホットパック,トリガーポイント注射,理学療法,鍼灸治療が有効。

仕事人の楽屋裏 21
小澤竹俊

高校時代,どんな仕事に就いたら幸せになれるかと考え,自分がいることで他の誰かが喜ぶ仕事を探しました。最初は,海外で活動したいと思っていましたが,高校時代にマザーテレサの映画をみて,日本で一番苦しんでいる人ため働きたいと考え,医師を志しました。出身は東京でしたが,医療過疎地での医療活動を夢見て慈恵医大卒業後は,山形で7年間学びました。その後,苦しむのは医療過疎地で生活する人だけではなく,命に限りがある人であると考え,31歳のときに横浜甦生病院ホスピス病棟で働くようになりました。そして,どんな病気でも,どこに住んでいても安心して人生最期まで過ごせる社会を目指したいと願い,43歳のときにめぐみ在宅クリニックを開設しました。

FAST FACT〈21〉問題解決療法

平井 啓
大阪大学大学院人間科学研究科/経営企画オフィス


がん患者は,身体症状のみならず,再発・転移に対する心配や漠然とした不安感,さらには人間関係のストレスなどの多様な問題を抱えている。これらのがん患者の抱える多様な問題に対して,心理療法・精神療法による対応が行われている。そのなかでも問題解決療法(problem-solving therapy)は,問題解決過程とよばれる心理プロセスに基づいて,さまざまな治療的技法をパッケージしたものである。

いま伝えたいこと―先達から若い世代に(20)

末永 和之
すえなが内科在宅診療所


1990年に1人のがん患者さんとの出会いが,私がホスピスの道に入るきっかけであった。その患者さんは「終末期医療の充実とは何か。一言で言って人間の死を尊重してくれるということだ」という問いかけで,そのような医療の場を望んでいた。それから今日まで,4千名近い患者さんの出会いのなかで感じたことをみなさんに伝えたい。

身寄りのない患者への対応(6)
帰る場所がなくなった人をどう支援するか?

岩田 直子
筑波大学附属病院 医療連携患者相談センター


近年,核家族化の影響にともない家族の形態は変化している。2015年(平成27年)の国勢調査では単独世帯が最も多く全世帯の3分の1を超え,65歳以上人口の6人に1人が1人暮らしであると報告されている。また,「平成28年度版高齢者白書」によると,施設入所者は2010年(平成22年)時と比べて1.3倍増であり,未婚の中高年や,配偶者と死別した1人暮らしの高齢者等が増加している。

身寄りのない患者への対応(5)
キーパーソンが不在のなかで本人が意識朦朧としてきたら,どうやって意思決定するか?

熊谷 靖代
野村訪問看護ステーション


人口の高齢化にともない,厚生労働省は,団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に,重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるように住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を目指している。今後は,病院ではなく在宅や施設での看取りが増えることが予想されるが,認知症高齢世帯や独居などの方の自宅での生活は介護サービスなどが関わっていない場合,今までどのような暮らしをしていたか,看取りでどのような希望を抱いていたか把握することが難しい場合も多く,その意思決定に難渋する場合がある。

身寄りのない患者への対応(4)
お金はあるけど身寄りのない人の財産をどう管理するか?

黒田 ちはる
賢見 卓也
NPO法人がんと暮らしを考える会


高齢化による独居世帯の増加,未婚率の上昇に伴い,今後も独居のがん患者は増加することが予測される。独居のなかでも特にキーパーソンが不在となる身寄りのない患者は大きく分けて2種類に分けられる。家族構成の変化などによる天涯孤独の患者。もう一つは実際には血縁・姻戚関係がいるものの,何らかの理由で疎遠になり,連絡が取れない患者である。

後者の場合,患者個人の財産であっても,相続財産となり得る可能性もあるため,患者1人の意思だけでは決めかねるケースもある。一方で前者の天涯孤独の患者に関しては,生存中に患者自身が身辺整理や残された生活の意思決定も行っていかなくてはならない。このような状況で財産管理に関しての直接的な介入は医療者の範疇を超えているが,残された時間のなかでの財産管理の選択肢を把握し共有することは,患者の意思決定支援に役立つと考えられる。

身寄りのない患者への対応(3)
インフォーマルな家族(内縁)への対応─特に関わりが希薄な家族・愛のない家族のとき

橘 直子
総合病院山口赤十字病院 医療社会事業部


現代における家族(生活を共にする共同体)の形態やあり様は,ライフスタイルの個人化,経済・生活活動の地域差,少子高齢化,性の多様性などによって,実にさまざまであり,実際の血縁や姻戚関係にある家族・親族よりも非血縁・非姻戚関係にある「重要他者」のほうが,患者自身の意思を汲み代理できる関係性を築けていることもしばしばある。

身寄りのない患者への対応(2)
連絡してほしくないという「身内」にどう対応するか?

倉持 雅代
さくら醫院


現代社会において家族のあり様は大きく変化し,子どものいない夫婦で片方が亡くなったり,独身のまま過ごしていたり,同胞も不在などと単身者も増えてきている。家族,親族との関係も疎遠となったなかで,患い,入院を余儀なくされる状況になったり,あるいは在宅療養を進めたりするなかで看取りを迎える場面に看護師として遭遇することもある。親族から連絡をしないでほしいと言われたり,本人が親族との連絡を取ることを拒んだりするなかで私たちはどのように看取りのケアをしていけばよいのだろうか。

身寄りのない患者への対応(1)
Best Interest─意識があるうちに何をしておいたらよいか?

福地 智巴
静岡県立静岡がんセンター 疾病管理センター


ベスト・インタレスト(best interests)とは,イギリスの成年後見制度にあたる Mental Capacity Act(MCA)2005のなかにある原則の1つである。その原則とは,「法的に意思決定能力がないと評価された本人に代わって行為をなし,あるいは,意思決定するにあたっては,本人のベスト・インタレスト(最善の利益)に適うように行わなければならない」というものである。近年の人口動態を踏まえれば,今後は「高齢者・単身・担がん・認知症」の課題を複数抱える身寄りのない人が増加するとともに,看取りにおける最善の利益の追求を医療者に委ねられる機会も増えると予想される。

知っておきたい法律・リソース (3)
在宅看取りで知っておきたいこと

清水 政克
清水メディカルクリニック


終末期患者の在宅療養を継続できるかどうかは,「家族がいかに近くにいるか」「愛する家族のためにどれぐらい介護をすることができるか」「家族内で家族の責任を分担することができるか」にかかっているといわれている。そのため,ケアする家族のいない単身者の在宅療養や在宅看取りでは,より困難が伴うと考えられている。すなわち,適切な在宅ケアのサポートなしでは,単身者はその療養場所や死亡場所という面において不利な状況におかれてしまうのである。

知っておきたい法律・リソース (2)
身寄りのない人を支えるためのリソース

廣橋 猛
永寿総合病院 がん診療支援・緩和ケアセンター


当院では,拠点病院などでの治療を終了した方,積極的がん治療の希望がない方などが,将来の緩和ケア病棟利用を念頭に,緩和ケア外来を受診される。そのなかで,最近は身寄りがない人の受診が増えている。家族がいる方であれば,通院や生活のサポート,今後の治療や療養についての意思決定,そして死亡時の対応などをお願いすることができるが,身寄りがない方の場合は難しい。こういった方を支えるため,地域にはさまざまなリソースがあり,前もってこれらのリソースを有効活用できるように準備をしていきたい。本稿ではこれらリソースの紹介と活用についてまとめていくこととする(表1)。

知っておきたい法律・リソース (1)
身寄りのない人の法律上の能力と財産管理・相続

山崎 祥光
弁護士法人 御堂筋法律事務所


さまざまな法律上の能力とそのレベル
1. 各能力の概要
判断や行動に関する能力のレベルにはさまざまな段階があるが,医療提供の場面では,①意思能力,②行為能力と③意思決定・同意の能力が問題となるので,用語の概要とそのレベルを表1に示す。

2. 意思能力
契約は2つの意思表示の一致によって成立するように,法律行為は当事者の意思に根拠づけられる。しかし,そのためには最低限の理解力・判断能力が必要であり,意思能力に欠ける場合には,法律行為は無効となる(民法改正で第3条の2として明文化される予定)。一般的には,意思能力ありとされるには,6~10歳児程度の能力が必要といわれている。

日本の現状・家族の変化

西 智弘
川崎市立井田病院 かわさき総合ケアセンター


平成に入ってからの家族のあり様は,昭和中期~後期のそれとは大きく様変わりしている。生涯未婚率は上昇し,核家族化が進行し,高齢独居者も増え,そしてこれらの傾向は今後も進行していくことが予測される。

そういった状況のなかで,私たち緩和ケア医療者を取り巻く環境も変化してきている。国の方針は,より在宅での終末期療養を推進する傾向にあり,それを支持するエビデンスも多く発表されるようになってきている。しかし一方で,単身独居の世帯や,高齢者の2人暮らしといった世帯では,特に担がん患者においては在宅で終末期を過ごすということ自体に多くの困難があることも事実である。私たち緩和ケア医療者は,こういった社会状況に応じて,どのような知識や実践を身につければ,患者が自らの人生をまっとうできるように支援ができるのかを考えていく必要がある。

のぞいてみよう!国際学会最前線 9
異なる文化,共通する願い─再会の楽しみと新たな学び

学会名:第12回アジア太平洋ホスピスカンファレンス:
12th Asia Pacifi c Hospice Conference 2017:APHC
開催日:2017年7月26日~7月29日
開催地:シンガポール


松島たつ子
ピースハウスホスピス教育研究所


アジア太平洋ホスピス緩和ケアネットワーク(Asia Pacifi c Hospice Palliative Care Network : APHN)は,1995年,(財)ライフ・プランニング・センター日野原重明理事長が,アジア太平洋地域の関係者に呼びかけ,互いの知識や経験を分かち合い,この地域におけるホスピス緩和ケアの発展を目指して,連絡会議を開催したことからスタートした。緩和ケアに関心をもつ人々が,この地域で学びの機会をもてるように,またアジアの文化を尊重した緩和ケアを育てていこうという願いがあった。2001年, 正式な団体として登録され, 現在,APHNには,30を超す国と地域から,団体・個人合わせて1,500余の会員が登録されている。