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のぞいてみよう!国際学会最前線 12
世界を知って自分の医療を見つめ直す

のぞいてみよう!国際学会最前線 12
世界を知って自分の医療を見つめ直す

学会名:Palliative Care Clinical Study Collaborative(PaCCSC)9th Annual Research Forum
    オーストラリア緩和ケア臨床試験グループ第9回年次学術集会
開催日:2018年2月27日
開催地:シドニー


松岡弘道
University of Technology Sydney, Faculty of Health, Visiting Professor/近畿大学医学部内科学教室心療内科部門講師


PaCCSCは,緩和ケア臨床試験をサポートする豪州の多施設共同研究組織です。2006年6月の始動当初から臨床試験参加が可能な施設の確保に努め,現在の参加施設は20を超えています。また,これまでに複数の第Ⅲ相臨床試験を完了させ,現在も常時10〜20程度の臨床試験を実施しています。

えびでんす・あれんじ・な~しんぐ(EAN)
便秘─薬剤だけでなく患者の生活に焦点を当てた介入<12>

熊谷靖代(野村訪問看護ステーション)


便秘に関する定義はいくつかあり,日本緩和医療学会では「腸管内容物の通過が遅延・停滞し,排便に困難を伴う状態」と定義されています。
排便が滞ることで腹痛や肛門部痛,腹満感,食欲低下,悪心などの苦痛や日常生活での支障が生じます。特に緩和ケアを受けているがん患者における便秘は32~87%の頻度であるといわれ,原因としては食習慣や生活習慣に加え,消化管閉塞や脱水などがんが原因である場合,糖尿病などの併存疾患,オピオイドや抗うつ薬などの薬物などさまざまな要因が関与し,対応に苦慮する場合も多いと思います。

落としてはいけないKey Article 23
ガイドラインにしたがって制吐剤を選択するのは意味がない?

森田 達也(聖隷三方原病院 緩和支持療法科)
内藤 明美(宮崎医師会病院 緩和ケア)
今井 堅吾(聖隷三方原病院 ホスピス科)


【今月のKey Article】
Hardy J, Skerman H, Glare P, et al:A randomized open-label study of guidelinedriven antiemetic therapy versus single agent antiemetic therapy in patients with advanced cancer and nausea not related to anticancer treatment. BMC Cancer 18(1 ):510, 2018. doi:10.1186/s12885-018-4404-8.


今月は,ガイドラインにしたがって悪心の原因を想定して制吐剤を選択する方法と,原因に関係なく一括してハロペリドールを使う方法の比較試験を扱います。

緩和ケア口伝―現場で広がるコツとご法度(23)
終末期において理学療法を行うコツと注意点

内山 郁代
(浜松市リハビリテーション病院)


●終末期のリハビリテーション(以下,リハビリ)への依頼は,ADLや身体機能維持向上,倦怠感などの身体症状の改善を目的としたものが多い。
●患者・家族がリハビリを希望する背景(特にスピリチュアルペイン)について,理解する必要がある。
●希望する内容とリスクについて,チームで共有していく必要がある。

緩和ケア口伝―現場で広がるコツとご法度(23)
手足症候群予防にHMB含有栄養補助食品

長沼 篤
(国立病院機構 高崎総合医療センター 消化器内科)


● 子標的治療薬を用いる場合には,手足症候群の管理が重要である。
●手足症候群の管理では,多職種が連携して対応するチーム医療が有用である。
●創傷治癒を促進するHMB含有栄養補助食品が,手足症候群を予防する可能性がある。

緩和ケア口伝―現場で広がるコツとご法度(23)
がん関連疲労について

玉田 聡
(大阪市立大学大学院医学研究科泌尿器病態学)


●がん患者の難渋する愁訴で最も多いのは疲労。
●疲労は全身状態の低下を意味し,治療の継続を困難にすることがある。
●がん関連疲労は,さまざまな要因から発生する。
●患者の多くは疲労を訴えないことが問題で,まずは疲労を適切に評価することが大事である。

仕事人の楽屋裏 23
関根龍一

私は,仏教寺院の家庭に生まれ,9歳で得度し仏門に入りました。毎年お盆には,祖父のすぐ後ろについて檀家回りを手伝い「かわいい小僧さんね」と言われお布施もいただいたりしていました。中高時代は,祖父が住職をしていた京都の日蓮宗本山妙覚寺で小僧をしながらカトリックの学校に通学。
高校生時代に進路を決める頃に,日野原重明先生や柏木哲夫先生が書かれたターミナルケア関連の本に出会います。そこで,現代日本では,生老病死の苦しみを扱う場は残念ながらお寺にはなく,その大部分は病院の中にあること,そして,望ましい終末期や死のあり方を研究する医療分野は,まだ発展途上であることを知りました。恩師と仰ぐ日野原先生をはじめ大勢の先生方のご指導のもと,緩和ケア医を目指し今に至ります。

緩和ケアコンサルテーションの秘訣(1)
チームビルディングとチームワーク

谷向 仁*1,3,伊達泰彦*2,3,嶋田和貴*2,3,恒藤 暁*1,3
*1 京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻 
*2 京都大学大学院医学研究科 臨床腫瘍薬理学・緩和医療学講座
*3 京都大学医学部附属病院 緩和ケアセンター/緩和医療科


現在,医療機関では,緩和ケアチーム,感染対策チーム,栄養サポートチーム,精神科リエゾンチームなどさまざまな医療チームが存在している。このうち緩和ケアチームは,がん対策基本法が成立して以後,がん診療連携拠点病院をはじめとして多くの医療機関で結成され活動している。緩和ケアチームは,身体症状担当医,精神症状担当医,看護師,薬剤師などによる多職種で構成されるチームであるが,各専門領域のスペシャリストを集めるだけでは,必ずしも機能的にチームワークを発揮できるチームが結成されているとはいえない。むしろチーム結成後,チームをどのように育てていくかが大切な作業といえる。

FAST FACT〈23〉Non-convulsive status epilepticus(非けいれん性てんかん重積状態)

小川朝生
(国立がん研究センター先端医療開発センター精神腫瘍学開発分野)


非けいれん性てんかん重積状態(non-convulsivestatus epilepticus:NCSE)は,脳波上は電気的な発作活動が持続しているにもかかわらず,けいれんなどの運動症状が目立たず,意識障害を前景に示す状態を指す。
NCSEが臨床で注目されるようになった理由は,(低活動性せん妄などの)意識障害と思われている症例のなかに治療可能な病態が混じっていること,医療者が十分に認識していないために未治療で見逃されていること,突然死につながる危険性があること,である

発達障害のあるらしい医療者との協働

佐々木 史
市立釧路総合病院 精神神経科


精神科医として某病院に赴任して間もない頃,こんな症例を依頼された(患者および関係者のプライバシー保護の観点から,経過は敢えて一部改変してある)。
患者は30歳代前半の女性。めずらしい部位のがんであることが判明し,かつ既に多発肺転移も認められ,予後不良と考えられた。いったん呼吸器外科に転科して肺の部分切除術を終え,また元の病棟に戻って化学療法施行中であった。主治医からの依頼の内容は「まだ若いのに予後不良のがんなので,精神科が必要です」とのこと。想像はつくけど,できれば「どう必要なのか」を書いてほしいな…などと思いながら,いざベッドサイドに伺うと,笑顔の可愛らしい,人懐こい患者であった。曰く,「そりゃぁ最初にがんだって聞いたときはびっくりしたし,相当落ち込んだけど,今は大分落ち着きました。主治医が精神科にもかかっとけって言うから…」。

発達障害という視点を緩和ケアに活かす(7)
「きれい好き過ぎる」患者

相澤 香織
市立札幌病院 精神科


発達障害の傾向を有する人は,コミュニケーションや社会性の特性から「変わった人」「わがままな人」とみなされ,周囲との軋轢が問題となることが少なくない。入院中の患者においても,発達障害の特性への理解が得られず指示になかなか従えない,問題行動を起こしやすいなど「難しい患者」と認識されてしまい,治療に支障をきたす場合もある。
また,発達障害の特性から,がんの告知や入院治療といったストレスに直面した際に,種々の精神症状を呈しやすく,精神疾患との鑑別が問題となるケースも多い。
筆者が経験した強迫性障害との鑑別が問題となった症例について提示し,発達障害を有する患者のケアについて考察する。

発達障害という視点を緩和ケアに活かす(6)
「クレームが多い,ルールが守れない」患者

大谷 弘行
九州がんセンター 緩和治療科

白石 恵子
九州がんセンター サイコオンコロジー科


『「抗がん剤で白血球と血小板が少なくなっているから,ケガをしないように」って言われたのに,どうして注射をするの(怒)。看護師さんは針で体を傷つけているでしょ』『「血糖値が高くなるからジュースはだめ」と言われたから(ジュースではない)酎ハイを飲んだよ。少しフラフラするね。』
「もっともなこと」である。そう,間違っていない。けれど何かが違う…。そんな感覚である。

発達障害という視点を緩和ケアに活かす(5)
「こだわりが強く怒りっぽい患者」への対応

坂田 尚子
東京大学医学部附属病院 緩和ケア診療部


緩和ケア領域で活動している臨床心理士(以下,心理士)は,病院によってさまざまな立場や活動範囲のなかで仕事をしていることと思われる。筆者のように緩和ケアチームで活動している場合,身体症状緩和をメインとした依頼に加え,依頼元の医療者が患者・家族の対応に困難さを感じているケースに対して心理面の相談を受けることも多い。本稿では,こだわりが強く怒りっぽい患者を想定し,筆者がどのようにアセスメントを行い,介入方法を検討しているか( 患者に対する病棟スタッフの対応の提案を含む)について述べていきたい。

発達障害という視点を緩和ケアに活かす(4)
「予定の変更でパニックになる」患者

榎戸 正則
国立がん研究センター東病院 精神腫瘍科


医療においては,治療反応の違い,合併症や偶発症といった期待とは違う経過などから,当初予定していた治療計画を変更せざるを得ないことがある。医療者は経験を積むほどにこのことを不文律として,意識に挙げることも少なくなっていく。これは,医療者にとっては培われた経験によって変化する状態に対してより迅速に対応できる能力ともいえるが,罹患した経験が乏しい,もしくはない疾患に罹患した患者のすべてがこの不文律を想定できるとは限らない。

発達障害という視点を緩和ケアに活かす(3)
「死ぬかもしれないと認識していない患者」にどのように対応するか?

齋藤 円
市立ひらかた病院


50歳代男性。直腸がん再発,多発肺転移に対して,腫瘍内科で外来化学療法を受けていた。抗がん剤の効果が見込めなくなっていること,腎機能が悪化していることから,主治医から治療中止の説明を受けた。
その後,外来を受診した際に,何度も説明をしても,「抗がん剤をいつ再開できますか?」「いつになったらまた治療できますか?」などの質問を繰り返し,1年以上先の仕事の予定について話すことが続いた。
仕事について尋ねると,「治療が再開できたら,このプロジェクトに取り組みたい」と答え,「死ぬかもしれない」とは認識していないようであった。

発達障害という視点を緩和ケアに活かす(2)
「こだわりが強く,治療に滞りがある」と感じられる患者

井上 真一郎
岡山大学病院 精神科神経科


成人の場合,小児期から発達障害があったとしても,ふだんの生活においてその特性は目立たないことがある。ただし,ひとたびがんに罹患し,入院して治療を受けるといった想定外の状況に陥ると,環境変化を含めたストレスへの脆弱性,感覚の過敏さなどから,本来の特性が顕著に現れて不適応を起こすことがある。

発達障害という視点を緩和ケアに活かす(1)
「理解が悪い」と感じられる患者/「先々の ことが考えられない」と感じられる患者

東谷 敬介,杉山 効平
市立札幌病院精神医療センター


筆者らは,リエゾンチームに所属し,主に病棟看護師が「困った」と感じる患者の相談を受け付けている。最近では,「なんか発達障害っぽいのですが…」といった相談を受けることもしばしばある。「発達障害」と聞いただけで,「何だか対応が難しそう」と困惑する看護師から,「発達障害だから○○を行うことがよい」とステレオタイプ的な意見を断定する看護師まで反応はさまざまではあるが,対応に苦慮していることが多い。

緩和ケアをするうえで必要な発達障害の知識

上村 恵一
独立行政法人国立病院機構北海道医療センター 精神科


私たち医療者には苦手な患者がいる。病状が深刻であっても,あの患者と話すのは,あるいはベッドサイドに行くのは苦手,ときにはつい陰性感情をもってしまいがちな患者のなかに自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder,ASD)の方が存在する。精神心理的ケアの専門家ではなくても,ASD 傾向にある人についての対応をチームで検討することが重要であるが,どのような症例からその特性を疑えばよいだろうか。ASDは,診断基準が分かりにくく,正確な診断には精神心理的ケアに携わる専門家の助けが必要であるが,一方で安易なレッテル貼りにならないことがさらに重要である。人は,発達に対しての偏りを少なからず有しており,その程度が緩和ケアを提供するにあたり阻害要因となる場合に,その発達特性について加味しながらケアに関わる必要がある。