「とりあえず大本(患者中心)に戻る」ということ

2018.03.15

大谷 弘行
九州がんセンター 緩和治療科


あなたは,昨日何人の方と出会い,何を話しただろうか。そして,その方について何を知っただろうか。
ある緩和病棟で勤務していたときのことだ。担当の患者のお見送りをした後,病室に何か忘れていることに気づいた。幼児期から現在までにわたる患者のアルバムであった。それを見て,その方のことを何も知らなかったことに愕然とした。また,あるとき,一家の大黒柱であった男性が膵がんとなり,顔をしかめて痛がっていた。レスキューを勧めたが,拒否を繰り返していた。医療者として,どうしたらよいのか分からなかった。そんなとき,ぼそっと語り始めた。「僕は遺された家族にがんばっていた姿を憶えていてほしいんだ」「……」。

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