また,たとえばある患者さんがいきなり自分に対して怒り出したとします。その時に,「私,何か悪いことをしたかな?」と自分に原因があるのではと考える前に,まずなぜ怒っているのか,自分の知らない理由を「どうしましたか?」と聞くなどして,客観的に患者さんに起きている現実を理解しようとすることが大切です。
また,“自分はほんの少ししかこの人のことを知らない”,と意識していることは,思い込みや早まった判断,浅薄な結論で簡単に満足することなく,その奥にある背景をより深く知ろうとする感性を強めます。気持ちを若く保つ,ということでしょうか。
また,患者さんの怒りにも動じず,「本当によく話してくれました。私はあなたの話を聞くためにここにいるのですから」と言って聞いていると,だんだんと落ち着いてこられ,訪問の最後の頃には,「実はね…」と本心を話し出してくださった方もおられました。
怒りについては,自分の心地良さや尊厳を失う恐怖,その脅威から身を守るための衝動だと理解していますので,怒る自分にも怒る人にもまず,何を恐れているのか,何が傷や脅威になっているのか,何を守ろうとしているのか,という問いかけをもって理解しようとしています。