がんと告げられた時,人はまず何を思うのだろうか?「まさか,私が?」ということが頭の中で駆け巡り,うろたえ,真っ白になるのであろう。そして,それまで当たり前であった自分の存在がなくなってしまうこと,つまり「死」を意識するのである。
しかし,それはあまりにも孤独であり,恐怖を伴うため,「死」に対して意識を向けないように生きていくのだろう。医師から「もう治療法がない」と告げられたあとは,必死で“生きる主体”としての自分を鼓舞することが,治療への執心,現実とかけ離れた希望をもつことにつながっているのではないかと察する。その時,医療者は何を思うのであろうか。