いま伝えたいこと―先達から若い世代に<2>
「ペーシエントからパースンへの挑戦」に価値をおいて

2015.03.15

 1960年代,大学病院のナースだった頃,終末期がん患者の痛み治療は,急性期のそれとまったく同じで,オピオイド製剤の筋肉内注射でした。注射ですから,吸収は速いのですが,血中濃度は中毒域にまでになりますので,患者は眠ってしまいます。排泄も速く,目覚めると,また痛みとの闘いです。すがるように「注射をしてください」と訴える患者の背中をさすりながら,一緒に泣くしかなかったこともありました。強い痛みの中で,のたうちまわっている姿は,まさしく拷問を受けているように見えたのです。

 あの頃体験した無力感や,ナースとして何もできずに途方に暮れていた経験は,私が,ホスピス・緩和ケアの道に導かれたひとつの原点でもあったように思います。

この記事の続きは、下記書籍からお読みいただけます。