「治療するかしないか」について悩む場面―新しく治療・ケアを始めるのか?
終末期がん患者に起きた,骨転移によらない,大腿骨頸部骨折

2015.08.21

 本稿では,がん患者の,療養中に併発した大腿骨頸部/転子部骨折(骨転移に伴う病的骨折を除く)を扱う。生命予後としては,おおよそ3 カ月以内を想定する。
 大腿骨頸部/転子部骨折は,高齢化に伴って増加している骨折である。大腿骨頸部/転子部骨折は,寝たきりの原因となり,また生命予後の短縮とも関わっており,1 つの社会問題と認識されている。2007 年の年間発生数は15 万例であり,40 歳から年齢とともに増加し,70 歳を過ぎて急激に増加していた1)。この年齢層は,がんの好発年齢とも合致しており,骨転移の有無にかかわらず,がん患者が療養中にこの骨折を経験する可能性は,少なくないと考えられる。

この記事の続きは、下記書籍からお読みいただけます。

200080

Vol.25 Suppl(増刊号)

緩和ケア 2015年6月増刊号

緩和ケア臨床  日々の悩む場面のコントラバーシー

 昨今,緩和ケアについての教科書もマニュアルも,雑誌の特集も増えたが,臨床家の悩みは尽きない。その1つに,“やめどき”がある。「これまでの治療やケアをいつまで続けるのが正解なのか」「いつやめたほうが正解なのか」─抗がん治療のような“大きな”決断ではなくても,毎日毎日,こまやかな,しかし確かに決断が必要なことが存在する。

● 骨合併症のために定期的に投与していたビスホスホネートは,いつまで続けるべきなのだろうか?
● 消化管閉塞に対して効果があるように見えたソマトスタチンは,患者が死亡数日前に思える時にも継続するべきなのだろうか?
● ステロイドを内服していた患者が内服できなくなったら,ステロイドを注射薬に変えてでも,継続するべきなのだろうか?
● 看護ケアでは,吸引やバイタルサインのチェックは,どうなったら中止した方がいいのだろうか?
●「 この民間療法が効くはずだ! 」という信念のある患者・家族にどう対応するのか?
● 患者自身が,「家族には説明してほしくない」と言いつつ病状が悪化していく時に,どうしたらいいか?
●「 患者が希望をなくすから,嘘の説明をしてほしい」と家族に希望されたらどうしたらいいか?

 これらは,ある程度の「エビデンス」が確認されているものもあるが,まったくないような事柄もある。それでも,なるべく各執筆者の考えや,臨床経験から,“具体的な対応策集”となるよう記述してもらった。本増刊号が,これらの疑問に日々悩む臨床家の一助となれば幸いである。

詳細を見る