「治療するかしないか」について悩む場面―新しく治療・ケアを始めるのか?
進行がん患者の複雑性尿路感染や,無気肺内の呼吸器感染に対する治療

2015.08.21

 そもそも,進行がん患者の感染症では,常につきまとう問題がある。それは,「治療適応がどこまであるか」という問題である。これに関しては,2 つの対立した考え方がありうる。1 つ目は,「腫瘍の進行による感染症は不可避なものであり,治療する必要はないという考え方」。2 つ目は,「治療すれば苦痛症状が緩和されるので,しっかりとした診断や治療を行うべき」とする考え方である。
 これは,そのいずれかを選択するのではなく,「両者の考え方の間で着地点を見出していく」という作業が必要になる。腫瘍の進行度や,予測される生命予後,患者・家族の意思や,療養の場における検査・治療の実現性などを総合的に考慮して行うべき,難しい判断となる。

この記事の続きは、下記書籍からお読みいただけます。

200080

Vol.25 Suppl(増刊号)

緩和ケア 2015年6月増刊号

緩和ケア臨床  日々の悩む場面のコントラバーシー

 昨今,緩和ケアについての教科書もマニュアルも,雑誌の特集も増えたが,臨床家の悩みは尽きない。その1つに,“やめどき”がある。「これまでの治療やケアをいつまで続けるのが正解なのか」「いつやめたほうが正解なのか」─抗がん治療のような“大きな”決断ではなくても,毎日毎日,こまやかな,しかし確かに決断が必要なことが存在する。

● 骨合併症のために定期的に投与していたビスホスホネートは,いつまで続けるべきなのだろうか?
● 消化管閉塞に対して効果があるように見えたソマトスタチンは,患者が死亡数日前に思える時にも継続するべきなのだろうか?
● ステロイドを内服していた患者が内服できなくなったら,ステロイドを注射薬に変えてでも,継続するべきなのだろうか?
● 看護ケアでは,吸引やバイタルサインのチェックは,どうなったら中止した方がいいのだろうか?
●「 この民間療法が効くはずだ! 」という信念のある患者・家族にどう対応するのか?
● 患者自身が,「家族には説明してほしくない」と言いつつ病状が悪化していく時に,どうしたらいいか?
●「 患者が希望をなくすから,嘘の説明をしてほしい」と家族に希望されたらどうしたらいいか?

 これらは,ある程度の「エビデンス」が確認されているものもあるが,まったくないような事柄もある。それでも,なるべく各執筆者の考えや,臨床経験から,“具体的な対応策集”となるよう記述してもらった。本増刊号が,これらの疑問に日々悩む臨床家の一助となれば幸いである。

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