「やめどき」について悩む場面―これまで行っていた治療・ケアを続けるのかやめるのか?
認知症治療薬・抗うつ薬・統合失調症に対する抗精神病薬など既存の精神疾患に対する治療薬

2015.08.21

 精神疾患に対する薬物療法は,一般的に長期に及ぶ。たとえば,統合失調症は,急性期エピソードのあとには,維持療法を行い,抗精神病薬の漸減を検討することになる。しかし,実際には,複数の急性期エピソードを繰り返し,漸減できずに維持療法を行っている場合が多い。
 認知症については,高度認知症に対しても症状改善効果が認められたことから,効果があるかぎり,抗精神病薬を継続する方針になりつつある。
 向精神薬は,経口薬が多いため,内服が困難になると同時に,継続が難しくなる。また,抗精神病薬などは,鎮静作用をもつため,全身状態が悪化すると,日常生活活動度を下げる方向に働くリスクがある。一方,向精神薬を中止すると,精神症状が悪化(統合失調症では,幻聴・妄想の再燃,うつ病では抑うつ気分の増悪など)するリスクがあり,漸減・中止を躊躇することも事実である。
 本稿では,終末期における向精神薬(抗認知症薬,抗うつ薬,抗精神病薬)の継続・中止の判断をいかに行うかについて,検討してみたい。

この記事の続きは、下記書籍からお読みいただけます。

200080

Vol.25 Suppl(増刊号)

緩和ケア 2015年6月増刊号

緩和ケア臨床  日々の悩む場面のコントラバーシー

 昨今,緩和ケアについての教科書もマニュアルも,雑誌の特集も増えたが,臨床家の悩みは尽きない。その1つに,“やめどき”がある。「これまでの治療やケアをいつまで続けるのが正解なのか」「いつやめたほうが正解なのか」─抗がん治療のような“大きな”決断ではなくても,毎日毎日,こまやかな,しかし確かに決断が必要なことが存在する。

● 骨合併症のために定期的に投与していたビスホスホネートは,いつまで続けるべきなのだろうか?
● 消化管閉塞に対して効果があるように見えたソマトスタチンは,患者が死亡数日前に思える時にも継続するべきなのだろうか?
● ステロイドを内服していた患者が内服できなくなったら,ステロイドを注射薬に変えてでも,継続するべきなのだろうか?
● 看護ケアでは,吸引やバイタルサインのチェックは,どうなったら中止した方がいいのだろうか?
●「 この民間療法が効くはずだ! 」という信念のある患者・家族にどう対応するのか?
● 患者自身が,「家族には説明してほしくない」と言いつつ病状が悪化していく時に,どうしたらいいか?
●「 患者が希望をなくすから,嘘の説明をしてほしい」と家族に希望されたらどうしたらいいか?

 これらは,ある程度の「エビデンス」が確認されているものもあるが,まったくないような事柄もある。それでも,なるべく各執筆者の考えや,臨床経験から,“具体的な対応策集”となるよう記述してもらった。本増刊号が,これらの疑問に日々悩む臨床家の一助となれば幸いである。

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