心理士の立場から大切にしていること
死別は誰もが経験する普遍的なライフイベントだが,悲しみを生きるというその切実な営みはすぐれて固有である。古語では「愛し」を「かなし」と読むように,喪った人を想う愛しみと悲しみは同じ心情の2つの顔だからこそ,悲しみのあるところにはさまざまな思いが去来する。深い哀惜の念や自己の徳性を損なうほどの怒り,自責と悔いの呻吟,一切の拠り所を失ったかのような空虚感,さらには,“悲痛”としか表現しえない痛切な情感が胸を貫くような事態も含めて,一言に「グリーフ」と命名されるその内実はどこまでも多様でありうる。