実践としてのビリーブメントケア-熟練者のスキルを取りこむ(5)
ビリーブメントケアで大切にしているスキル3

2017.03.15

心理士の立場から大切にしていること

死別は誰もが経験する普遍的なライフイベントだが,悲しみを生きるというその切実な営みはすぐれて固有である。古語では「愛し」を「かなし」と読むように,喪った人を想う愛しみと悲しみは同じ心情の2つの顔だからこそ,悲しみのあるところにはさまざまな思いが去来する。深い哀惜の念や自己の徳性を損なうほどの怒り,自責と悔いの呻吟,一切の拠り所を失ったかのような空虚感,さらには,“悲痛”としか表現しえない痛切な情感が胸を貫くような事態も含めて,一言に「グリーフ」と命名されるその内実はどこまでも多様でありうる。

この記事の続きは、下記書籍からお読みいただけます。

200092

Vol.27 No.2

緩和ケア 2017年3月号

実践としてのビリーブメントケア―熟練者のスキルを取りこむ

 ビリーブメント(死別)は、決して特別な経験ではない。それに伴う悲嘆(グリーフ)も、誰しも経験しうる正常な反応である。一方で、大切な人の死は、残された者の心身に深刻なダメージを与え、死亡や罹患、自殺、複雑性悲嘆につながる危険性も孕んでいる。本誌でのビリーブメントに関する特集は5回目であり、この間、ビリーブメントへの関心の高まりとともに、その取り組みも広がりを見せつつある。

 本特集では、ビリーブメントに関する理解を深めるとともに、特に緩和ケアにおいてどのような家族・遺族への支援が求められるのか、医療者として何ができるのかを考えていく。
 まず、緩和ケアにおいて知っておくべきビリーブメントの基本として、概念や考え方、複雑性悲嘆やリスクアセスメントについて解説する。
 次に、ビリーブメントケア/グリーフケアの具体的な援助方法について、研究知見や臨床経験を交えながら、実際の課題に対する対応や工夫を考える。
 さらに、緩和ケアに関わるさまざまな立場から、各立場で遺族に対して何ができるのか、あるいは何をこれからしたいと考えているのかについて論じる。
 最後にショートレビューとして、看護領域別でのビリーブメントに関する学術研究の動向を紹介する。

 本特集が、ビリーブメントケア/グリーフケアを緩和ケアの大切な働きの1つとして、理念にとどまらず、実のある実践として定着させるために、どのような方法やあり方が望まれるのかを議論する一助となることを願っている。

詳細を見る