実践としてのビリーブメントケア-熟練者のスキルを取りこむ(5)
ビリーブメントケアで大切にしているスキル5

2017.03.15

ホスピスボランティアの活動

私がガラシア病院ホスピス病棟のボランティアになったのは2006年,今から約10年前である。
私の家内がこの病棟で5カ月の入院ののち昇天した。入院中の後半からは完全に寝たきり状態になった。それでもベッドに乗せたまま,音楽を聞かせるためデイルームに連れて行った。デイルームで電子ピアノやギターを私が触っていると,意外にも,他の患者さんや家族の方からすごく喜んでいただいた。このとき,音楽には癒す力があると,初めて感じた。歌を一緒に歌ったり,ふれあいの場にもなっていた。このことが家内の死後もすぐにボランティアになるきっかけになった。遺族でしかも男性がホスピスボランティアになるのも,継続的に音楽ボランティアをするのも,この病院では初めてである。
以後,ボランティアを続け,現在も週に4日は,ホスピス病棟のデイルームで活動している。

この記事の続きは、下記書籍からお読みいただけます。

200092

Vol.27 No.2

緩和ケア 2017年3月号

実践としてのビリーブメントケア―熟練者のスキルを取りこむ

 ビリーブメント(死別)は、決して特別な経験ではない。それに伴う悲嘆(グリーフ)も、誰しも経験しうる正常な反応である。一方で、大切な人の死は、残された者の心身に深刻なダメージを与え、死亡や罹患、自殺、複雑性悲嘆につながる危険性も孕んでいる。本誌でのビリーブメントに関する特集は5回目であり、この間、ビリーブメントへの関心の高まりとともに、その取り組みも広がりを見せつつある。

 本特集では、ビリーブメントに関する理解を深めるとともに、特に緩和ケアにおいてどのような家族・遺族への支援が求められるのか、医療者として何ができるのかを考えていく。
 まず、緩和ケアにおいて知っておくべきビリーブメントの基本として、概念や考え方、複雑性悲嘆やリスクアセスメントについて解説する。
 次に、ビリーブメントケア/グリーフケアの具体的な援助方法について、研究知見や臨床経験を交えながら、実際の課題に対する対応や工夫を考える。
 さらに、緩和ケアに関わるさまざまな立場から、各立場で遺族に対して何ができるのか、あるいは何をこれからしたいと考えているのかについて論じる。
 最後にショートレビューとして、看護領域別でのビリーブメントに関する学術研究の動向を紹介する。

 本特集が、ビリーブメントケア/グリーフケアを緩和ケアの大切な働きの1つとして、理念にとどまらず、実のある実践として定着させるために、どのような方法やあり方が望まれるのかを議論する一助となることを願っている。

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