低酸素血症がない呼吸困難患者に酸素を投与する場面はあるか?

2017.11.15

合屋 将
公立学校共済組合近畿中央病院


『がん患者の呼吸器症状の緩和に関するガイドライン2016年版』(以下,2016年版ガイドライン)において,臨床疑問「低酸素血症がなく,呼吸困難を有する患者に対して,酸素吸入は呼吸困難を緩和するか?」に対する推奨は,「行わない」提案であった。2011年版では,同じ臨床疑問への推奨が,「行う」弱い推奨だったのに対し,180度の転換ということになる。この改訂は,臨床の現場に少なからぬ困惑をもたらしているかもしれない。呼吸困難は難治性で,治療の選択肢も乏しいため,貴重なオプションの1つが失われることに戸惑いが生じるのも理解できる。しかし,後述のとおり現状のエビデンスで酸素投与を推奨するのはやはり無理がある。また推奨文だけでなく解説まで読むと酸素吸入を試みる余地が残されており,酸素投与を禁じているわけでは決してない。2016年版ガイドラインの限られた紙数では十分伝わらなかった意図を,本稿で補足し解説していきたい。

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