<事例>
患者 Aさん,60 歳代後半,女性
原疾患 乳がん。多発肝転移,多発肺転移。がん性胸腹水貯留のため加療目的となり,入院となった。
家族 独居。夫とは死別。家族はいない。身の回りのことを手伝ってくれるような親しい友人もいない。
入院後経過 薬物療法や腹水・胸水穿刺で,苦痛症状はおおむねコントロールされていたが,3日前,新たに出現したがん性リンパ管症により,呼吸不全が出現。今後の病状進行を懸念した主治医が,Aさん本人へ急変時の対応を確認してみたところ,Aさんは「心臓マッサージや挿管はやってみたい」という意向だった。
主治医は,これまでの言動から,Aさんの理解力に疑問を感じたため,もう一度よく説明し,意向を確かめようと考えていた。しかし昨日,Aさんは痙攣発作を起こし,意識レベルが低下,意思疎通が困難となった(痙攣の原因は脳転移と判明)。そこで本日,急変時の対応に関するAさんの意向にどう対応したらよいか検討するために,臨床倫理コンサルタントを交えて,多職種カンファレンスを開催することになった。