予後の対話の現在地 何を伝え,どう支えるか
「予後を伝えた方がいいのか、伝えない方がいいのか」「いつ、どこまで伝えるべきか」「患者さんとご家族の意向が食い違ったらどうするか」
臨床の現場で日々迷う問いである。患者さんやご家族から「後どのくらいですか」と尋ねられ、伝えることで心を支えられる場合もあれば、かえって不安を強めてしまう場合もある。「予後」は「病名」とは異なり、常に不確かさをはらんでいるのである。
本増刊号では、予後予測の最新の研究や海外の実際に加え、日本の文化や社会的背景をふまえて、伝える/伝えない 両方の立場から考える。患者さんのやり残しやご家族の心残りを減らすケア、希望を支えるケア、心不全や認知症、小児など特定の疾患や集団ごとの特徴も取り上げ、現場での具体的な工夫や多職種の役割を紹介する。
予後の話題にどう向き合うか。そして、患者さんとご家族にどんな関わりができるか。誰もが直面する悩みに、さまざまな立場からご経験と知見を共有する。本増刊号が読者の実践の参考になることを願っている。
目次
序文 ⅲ
第Ⅰ章 予後と予後告知の概況と最新の知見
1 学術的な視点からの予後と予後告知
1 予後予測に関する最新の知見 平塚裕介 002
2 予後告知の社会学─予後の何が特別なのか 田代志門 010
3 アメリカでの予後の告知の現状 植村健司 016
4 終末期がん患者の心残りを減らし希望を支えるケアとは 近藤めぐみ 024
2 臨床的な視点からの予後認識と予後告知
1 予後認識(prognostic awareness)に関連する最近の知見 長谷川貴昭 029
2 予後告知に関する臨床的な考察 森 雅紀 038
第Ⅱ章 主治医チームの一員として予後の対話を考える
1 予後の対話をする時のタイミングをどう捉えるか
患者が医療者の予測より長い予後を語る時 尾阪咲弥花,原 理紗子 048
2 患者と予後についてどう対話を進めるか
1 どこまで伝えることが十分なのか 小野 悠 053
2 予後をめぐる沈黙のなかで 「難しさ」はどこから生じるのか
─腹をくくるということ 北川善子 058
3 予後について対話をした後の多職種の対応
1 余命告知がされていないAYA世代がん患者の事例から考える 大市三鈴 063
2 予後告知後の臨床においてリハビリテーション専門職が果たす患者支援 添田 遼 068
4 予後を伝える前後の家族への対応
1 患者との予後の対話に際する家族への配慮 吉田沙蘭 073
2 予後に関する患者と家族の意向が一致しない時の対応法 廣木貴子,柏木秀行 078
3 患者の希望で予後を伝えた医療者に対して家族が怒りを表出した際の対応 深井清乃 083
4「今日帰っても大丈夫でしょうか」に応える 柏谷優子 088
第Ⅲ章 予後の対話を支える緩和ケアチームの役割
1 患者・家族の準備状態を支えるための緩和ケアチーム看護師の役割 佐久間由美 094
2 患者に予後を伝えるか否かに当事者間で 「温度差」 がある時,看護師はどう動けばよいか 山下貴郁,重野朋子,浜野 淳 099
第Ⅳ章 疾患や年齢に特異的な予後の対話
1 心不全患者の予後と対話 大森崇史 106
2 非がん性呼吸器疾患における予後予測とACPの対話 住谷 仁,松田能宣 113
3 腎不全患者との予後の対話 大武陽一 120
4 神経難病患者との予後の対話 荻野美恵子 126
5 認知症者との予後の対話 小川朝生 132
6 子どもを主語にした予後の対話 余谷暢之 139
第Ⅴ章 患者とあらかじめ相談するケース
1 外来における終末期患者との予後および療養場所の相談
─serious illness conversation guideを軸とした実践 木澤義之 146
2 終末期の患者にあらかじめ 「苦痛が緩和できなくなった時の鎮静の選択」を相談するか 今井堅吾 152
第Ⅵ章 予後の対話について思うこと
1 「余命告知」 という呪いの言葉はやめたほうがよい 勝俣範之 160
2 緩和ケアチームにおける予後対話と予後を見据えた減薬(de-prescribing) 中川夏樹,釆野 優 162
3 ホスピスでの 「予後の対話」 について思うこと 前田一石 166
4 前医から引き継いだ在宅医の立場から 河原正典 168
5 患者や家族との予後の対話─看護師としての臨床経験を通して 中野貴美子 170
6 不確かさを共に歩む「予後の対話」の現在地─生活の場から問い直すscienceとart 吉村元輝 173
7 患者視点からみた予後に関する対話の体験 大島直也 176
8 予後を共有するということ─家族・遺族の立場から 金子稚子 179
9 予後の対話を支える土壌についての話 磯野真穂 182