夜は「眠らないといけない」のか
─倫理的な観点から

2017.07.15

田村 恵子
京都大学大学院 医学研究科 人間健康科学系専攻 臨床看護学講座 緩和ケア・老年看護分野


緩和ケアにおける不眠は,患者にとってつらい症状であるだけでなく,人手の少なくなる夜勤帯の看護師にとって切実な問題である。夜間のラウンド時に「眠れない」と訴える患者に対して,すぐに必要時指示の睡眠薬や抗不安薬を与薬するのがよいのか,入院前からの習慣で眠れないことがつらくないのであれば経過観察すればよいのか,不安を訴える患者には長くならない範囲で訴えを傾聴するのがよいのか,など悩むことが多々ある。また,閾値下せん妄の場合などでは,睡眠薬を与薬しないと過活動型せん妄に発展する可能性もあり,適切な判断を求められることも少なくない。
このように,不眠への対応は臨床上重要であるだけでなく,倫理上または管理上避けて通れない課題である。本稿では,緩和ケアにおける不眠が内包する問題点をおもに倫理的な視点から概観し,それらをふまえて看護管理者や夜勤の看護師はどう考えて,どのようなケアをすればよいのかについて私見を述べる。

この記事の続きは、下記書籍からお読みいただけます。