チャイルド・ライフ・スペシャリスト(以下,CLS)は,主に小児医療において子どもと家族に心理社会的サポートを提供する専門職である。北米の大学・大学院での専門教育の後,Child Life Council の認定を受け,医療チームの一員として,ストレスと不安を抱えている子どもと家族の支援を行っている。
臨床心理士は,がん医療ではおもに緩和ケアチームやがん相談支援センター,緩和医療科,精神科に配属されている。役割として,がんの治療を続けていくうえで生じる患者・家族の精神的な苦痛に対して,来談者の話をていねいに聞きながら,解決の糸口を一緒に見つけていくことを担っている。最近では,個人に対する精神療法よりもリエゾン的・コンサルテーション的働きが求められていることも多い。
最近,未成年の子どもをもつがん患者さんに接することが増えているため看護師は,がん患者さんの子どもに目を向けた支援の必要を強く感じ支援をはじめている。子どもさんのいる患者さんが入院されたときのこと,「この入院を子どもさんにどう話していますか」と聞くと,「実はどうしたらいいか悩んでいるんです…」という答えがかえってきた。患者さんは,子どもへの対応に悩んでいても看護師に相談するのを躊躇されているのだと思われる。悩んだときには,日常的に接する時間の多い看護師に,まず話してください。看護師は相談にのりたいと思っている。
乳がんを専門に診療をする医師として,罹患の年齢分布からも他のがん腫に比べて幼い子どもをもつ母親に数多く出会ってきました。親離れや子離れのタイミングには当然,個人差があります。子どもが低年齢であったり,障害を抱えている場合には,ほとんどの母親が“がん”と告知された時,普通ならば頭が真っ白になる瞬間に真っ先に子どもの将来を考えて,話しや質問をされていました。
近年,医療の進歩に伴ってがんは治癒または長期生存が可能な病気にもなりつつある。その中でがん患者は,さまざまな苦痛と折り合いながら日常生活を送っている。それは家族も同様で,臨床の場では家族へのケアも重要と考えられている。しかし,一般的に家族ケアは配偶者や親などの成人を対象としており,面会が制限される未成年者の家族へのケアは注目されにくい現状もある。
死別という体験が子どもに与える影響のひとつに、グリーフに対する適応が挙げられる。一般的に、大人は時間の経過とともにグリーフの症状が和らぎ、適応すると報告されているが、同様の適応力は子どもにはない。子どもにとって死別体験は、強い感情、生活や環境の変化、死の過程や儀式など、すべてにおいて適応や学びが求められる新しい体験なのである。そのため、成長の変化が著しい子どもを支えるためには、グリーフの基本理念に加えて、子ども特有のニーズを把握する必要がある。
親をがんで亡くすとき,子どもの心理的苦痛が強いことは明らかである。そのためか,子どもを取り巻く大人は,できるだけ親の死という現実に目を向けさせないで子どもを保護しようとする傾向にある。しかしながら,親の差し迫った死の経過を子どもに話さないことが,逆に子どもの不安を高くするといわれている。
がん患者で未成年の子どもがいる場合,入退院を繰り返すようになると,患者自身はできるだけ周囲に迷惑をかけたくないと思っていても,それまでの親としての役割を誰かに頼まざるをえない。そのような場合,実母や姑,姉妹が担うことが多く,なかには遠方から住み込みで子どもの世話をする両親もいる。頼れる親族がいない場合は,近隣,友人のサポート,社会的資源を入れながら,配偶者が担うことになろう。そのような子育て世代であるがん患者の家族の立場から考えてみたい。
看護師は,がん患者自身の思いを通して子どもの反応を間接的に聞いていることが多い。しかし,そのとき,子どもが何を必要としているのかはわかりにくく,戸惑うと思う。ここでは,親や重要な人が,がんに罹患したときの子どもたちに対するケアについて臨床看護師ができることを念頭に,ひとつのストーリーを示しながら考えをまとめてみたい。
近年,若年性のがん患者が増えており,未成年の子どもをもつ親ががんを患うことも多い。診断による心理的な動揺,治療や入院による生活の変化など,親の病気はその子どもの生活全般に大きく影響する。親は自分の病気が子どもの心理面や生活に与える影響,子どもが示す反応について心配する。
親ががんになった未成年の子どものサポートや病状理解に関して,患者さんやその配偶者と話をする機会が,数年前に比べ増えていると感じる。所属のケースカンファレンスでも話題にのぼることがあるが,支援の必要性を感じながらも,話の糸口が見つけられなかったり,どこまで立ち入ってよいのか戸惑いがあったりと看護師がジレンマを感じていることは少なくない。
今回,筆者自身が緩和ケアチームの専従看護師とサポート外来という看護師主導の外来での支援の中で出会った患者さんを振り返りながら,看護師がどのように関わっていけるとよいかを考えてみたいと思う。
子育て中の親ががんになるということは,どれほど子どもを含めた家族全体に衝撃を与えることだろう。がんという診断に動揺しながらも,ほとんどの親は「子どもの世話をどうしよう?」「なんて伝えよう?」「私がいなくなったら子どもの将来は?」など,真っ先に子どものことを考える。入院や治療による実生活上の変化を余儀なくされ,自分のがん治療と子どもの世話を同時にこなすことは,時間的・体力的・心理的にも大きな負担となる。
本稿では,がんになった親の体験や心理について,学齢期の子どもをもつ親のグループで話された患者本人の語りを紹介しながら概説する。
本稿では,Hope Tree がこれまで実施してきた調査報告1~6)から,わが国における「がんの親と子どものサポート」の現状と今後の課題について述べる。
発達途上の子どもに,親のがんが与える影響は大きい。がん患者を抱えた家族のなかにあって,子どもは,親の健康状態や家族内の雰囲気の変化を敏感に感じとっている。そして,発達途上ゆえの認知的・情緒的な特徴から,その年齢特有の見方で状況を解釈し,大人の予測とは違った悩みや心配を抱えていることもある。がん患者の子どもへの支援にあたっては,まず子どもが家庭に起きている状況をどのように捉えているのかを知ることが必要となる。そのために,通常の子どもの発達についての基本的な知識をもっておくことが役立つだろう。
「大人でさえショックを受けるがんの告知を,なぜ子どもにしないといけないのか」そうした疑問を抱く人はいるであろう。けれども,未成年の子どもを抱えるがん患者・家族を支援するうえで,子どもが親の病気について知ることは避けられない。そのおもな理由を以下に挙げる。
子どものホスピスは,大人のがんやエイズ患者を対象とした,終末期のケアが中心の施設やそのケアとは異なるものです。
子どものホスピスの活動は,英国のオックスフォードに,シスター・フランシスが1982 年に世界で最初に「ヘレンハウス」を設立したことから始まりました。
がん診療においては,家族は第2の患者として支援が必要な対象であることが唱えられ,家族をも含めたトータルケアの必要性が精神腫瘍医学の領域で推奨されてきた。しかしながら,家族に自立前の子どもが含まれていた場合,家族支援の対象には入れられず,子どもの対応は家族に任せられてきた。しかしながら,その家族もまた子どもの対応に悩んでいる現状がある。
「院内学級」と聞いてみなさんは,どんなイメージをもたれるでしょうか。実は,「院内学級」という名前は正式な名称ではありません。「(病弱・)身体虚弱の児童および生徒のために設置された」特別支援学級のなかで病院内に設置されたものの通称です。「病院のなかにある学校・学級」という言い方もされています。
エスビューローとは2000年5月大阪大学医学部附属病院でわが子を小児がんで亡くした代表の筆者と副代表が,当時の主治医らを巻き込んで設立した団体である。設立当初の活動は,医療従事者と患児家族の相互理解に役立つことを目的とした機関紙の発行と講演会や勉強会の開催。そして患児家族からの相談を受けることであった。



