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よく遭遇する場面の看護ベーシックに立ち返る
口腔ケアの基本と口腔トラブルへの対応

よく遭遇する場面の看護ベーシックに立ち返る
口腔ケアの基本と口腔トラブルへの対応

 がん終末期の患者は,全身状態の悪化やセルフケアが困難な状況が加わり,治療によって生じる口腔トラブル以外に,口臭や舌苔などが生じやすい。口臭は不快感が強く,患者だけでなく家族もつらい思いをすることがあり,コミュニケーションを困難にすることもある。患者の尊厳を維持するためにも,口腔ケアは重要な意味をもっている。

よく遭遇する場面の看護ベーシックに立ち返る
面会に来る家族への関わりと支援

 「日々の忙しいケアの中でなかなか家族との時間がとれない」「何をすれば,家族ケアなのか分からない」などの声を現場で耳にする。家族に対しても患者と同様に,患者と共に早期から関わる意識をもってみると,ケアの糸口をみつけることができるのではないだろうか。しかし,早期からといわれて何からすれば良いのか分からないと思われる方もいるだろう。まずは,家族に「話しかけ」「顔見知りになる」このことが大切である。「そういえば,いつも話かけてくれる看護師がいたな?」「ちょっと話しを聴いてもらおうかな?」と思わることが家族ケアの第一歩になるのである。

 本稿では,日々のケアの中でできる家族ケアについて考え,明日からできる家族ケアをみつけていくことについて提案したい。

よく遭遇する場面の看護ベーシックに立ち返る
困難を抱える患者とのコミュニケーション

患者とのコミュニケーションで,「病状説明後,患者さんから何か表出してほしいと思うけど,上手な言葉をかけてあげられない」「私が何か一歩踏む込むことで,患者さんの感情が乱れたらと思うと怖くて,患者さんの意向などは聞けない」「看護師のケアを拒否しているから,ベッドサイドに行くのが憂鬱」などと思うことはないだろうか? また,後輩看護師より前述したようなことを相談されて,どう答えたらよいか困ってしまったという経験をしたことはないだろうか? 筆者は,病棟勤務の際,看護師のこのような言葉をよく耳にした。多くの看護師は,緩和ケアを必要としている患者・家族とのコミュニケーションは,とても難しく,高い技術を必要とすることで,時間をかけてじっくりと行うべきもの,よって敷居が高い特別なものと苦手意識を抱いているのではないかと思う。

よく遭遇する場面の看護ベーシックに立ち返る
ここから始めよう 意思決定支援

 緩和ケア提供の必要性を意識する時,患者・家族の意思を尊重すること,「その人らしさ」を大切にすることが強く意識されるということはないだろうか。緩和ケアはQOL(quality of life)を改善するアプローチである。QOLは個人に帰属するものであるから,患者・家族の価値観に添ってケアすることで,緩和ケアは目標達成に導かれる。したがって,緩和ケアにおいて患者・家族の価値観や意思が大切にされるのは当然で,そのような意味において,意思決定支援と緩和ケアは一連のプロセスのなかにあるのだといえよう。 

よく遭遇する場面の看護ベーシックに立ち返る
せん妄を見過ごさないためのポイント

 病棟回診で「A さんが不穏で大変でした」と,聞くことがある。特に,夜勤からの引き継ぎ時に多く,その状況を尋ねると「夜中に点滴を抜き寝衣を脱いでベッドサイドに立っていた」や,「明け方“家族が居なくなった”と大きな声で家族を呼んでいた」などなど,不穏は,緊急対応が必要な状態である。がん患者の不穏の原因にはせん妄が多くみられるが,多彩な精神症状であることから,ストレスや心因性の反応あるいは性格に起因する行動の異常と誤解されることもまれではない。

 せん妄は,患者の苦痛の原因になるとともに,コミュニケーションが妨げられることから,症状の評価や意思決定が難しくなる。また,家族に不安を生じさせやすい。さらに,症状が長期化することにより,医療スタッフの疲弊につながることもある。これらのことから,せん妄を早期発見し,適切な管理をすることは重要である。

よく遭遇する場面の看護ベーシックに立ち返る
リンパ浮腫の発症と悪化を防ぐためのポイント

2008年4月より,リンパ浮腫に関わる診療報酬が新設され,医療保険点数が加算になったため,乳がんや子宮がんなどの手術前後にリンパ浮腫の予防指導が行われる機会が増えてきた。しかし,その内容は,施設によってばらつきがある。また,リンパ浮腫を発症しても本人に自覚がないケースや,「どうせ治らないから」と治療を諦めてしまい,症状を悪化させるケースが少なくない。日頃のちょっとした心がけが発症や悪化の予防につながるので,そのポイントを伝えたい。

よく遭遇する場面の看護ベーシックに立ち返る
医療用麻薬に対する抵抗感への対応

医療用麻薬に関する誤解として,①一度始めると止められなくなるのではないか,②命を縮めてしまうのではないか,③使い始めると効かなくなって量を増やさなければいけないのではないか,④頭がおかしくなってしまうのではないか,⑤使
うとすぐに亡くなってしまうのではないか,⑥胃を荒らすのではないか,⑦身体に悪い影響があるのではないか,⑧がん患者が使うものなのではないか,など患者によってさまざまなイメージがあるようだ。

よく遭遇する場面の看護ベーシックに立ち返る
がん疼痛に対してレスキューを正しく使う

 がんの痛みはいつ消失するか予想がつかない。そして,がんの進行とともに痛みがさらに強くなってくるといった特徴がある。がん疼痛を継続的にコントロールしていくためには,常に患者ごとに鎮痛薬の適量を調整していく必要がある。

 しかし,疼痛治療が開始され,定時鎮痛薬・レスキューを使用していくと,痛みを緩和するためにどのようにケアを行うのが良いのか,迷うことがあると思われる。
 
 今回は,疼痛緩和治療に関して対応に苦慮する場面の中から,レスキューをうまく使うための対策について提示したい。

らしんばん
地域に根をおろして

「ご夫婦共に看取らせていただき,幸せでした」先日,80 歳代の大腸がん・肝臓がん・膀胱がんと慢性呼吸器疾患を併発した男性を,自宅で看取らせていただいたあとで,わが白十字訪問看護ステーションのスタッフが,しみじみと語った言葉です。5年前に,膵臓がんの70歳代の奥様を看取らせていただいた時に関わった同じ看護師が,チームを組んで,今度はご主人のケアに関わりました。

症例報告
進行期から終末期における肺がん患者への理学療法介入について―最期まで患者と家族のQOL の改善を支援した1 症例

 進行期から終末期の過程にあるがん患者に対する理学療法の介入報告は,まだ少ない。今回われわれは,進行期から終末期へ移行した肺がん患者への理学療法介入において,一時的ではあるがADLの改善と,患者および家族のQOLの改善に貢献することができたと考え,経過と転帰を交えて報告する。

海外事情
“Healing Journey for Children”―親のがん告知から死別後に向けての継続的グリーフケアの紹介

 2010年3月3,4日の両日,アメリカのオハイオ州にあるオハイオ州立大学総合がんセンター(The Ohio State University Comprehensive Cancer Center―Arthur G. James Cancer Hospital And Richard J. Solve Research Institute:写真1)を訪れた。「Healing Journey for Children」というプログラムをしているChildren’s Programs Director(医療ソーシャルワーカー;以下,MSW)へのインタビュー,親と死別した子どものグループに参加させていただく機会があったため,紹介する。

海外事情
ニュージーランドの緩和ケアにおける歯科事情

 笹川記念保険協力財団の助成を受け,2010年12月4日~12月15日,2011年3月12日~3月30日の2回の渡航でニュージーランドにおいて緩和ケアの研修を行った。筆者自身は歯科医師として,ニュージーランドにおける緩和ケア医療制度(特に医科歯科連携について)と,歯科医師の緩和ケアでの役割について研修を受けた。
 
 当初は,オークランド病院にて研修を行う予定であったが,クライストチャーチ地震と筆者が住んでいる宮城県を中心とした東日本大震災の影響で,当初の計画を大きく変更しなければならなかった。結果として,ニュージーランド厚生省とオタゴ大学歯学部の協力を得て,保険制度についての調査と,実際にホスピスの現場での研修を行うことができた。

体験者の語りを聴く〈5〉
病い・死について じっくり考える時間があって

 いつもそうだが,インタビューで出会った人たちは,病院で出会う患者さんとは違った印象がある。1人ひとりを思い出す時,インタビューで訪れた場所や景色が,同時に浮かんでくる。多くはご自宅で,そうでない場合も地元に訪ねていくため,その人の生活がリアルに感じられる。早川さんの場合もそうだった。緑の多い公園を抜けて,どこだろうと地図を片手に歩く筆者に,元気な声で,頭上のベランダから「ここよ~」と手を振る早川さんが見えた。隣には洗濯物が揺れている。この団地で普通に暮らす人が,たまたまがんになったのだ。

私のちょっといい話
医者嫌いで頑固は在宅向き!?

 埼玉県所沢市で在宅緩和ケア診療所をはじめて7 年。未だに病院や地域のスタッフから「家にうまくつなげない」との声を耳にします。患者さんや家族が在宅療養を決断するには,病状だけではなく,患者さんの性格や家族との関係性も大切な要素です。今回は,家族から「医者嫌いで頑固だから,訪問診療を受け入れないかも」と言われながらも,温かな関係を築くことができた2 人の患者さんをご紹介します。

調査報告
緩和ケア認定看護師の役割認識と背景との関連

 緩和ケア認定看護師は,2011年11月時点で1,100名となり,がん患者の増加と多死時代を迎える今,緩和ケアの質を高めるために中核的役割を担うことが期待されている。しかし,認定看護分野専任で働く認定看護師は少なく,管理職の兼務や交代勤務の中で時間外労働による活動を行い,時間的制約などの問題から本来の役割を発揮しにくいのが現状である。このような中で,緩和ケア認定看護師が担う具体的な役割認識を明らかにし,その役割認識と背景との関連を明らかにすることは重要である。

画像で理解する患者さんのつらさ〈4〉
急に顔と首が腫れてきたんですけど,大丈夫でしょうか?

緩和ケアチーム看護師:今日のラウンドは,昨日入院となった肺がんの患者さんからです。R先生は,このMさんのことを知らないと思いますが,前回入院時,化学療法の悪心・嘔吐に難渋して,緩和ケアチームが呼ばれたんです。

緩和ケア科研修医:それで,カルテを読んでまとめてきました。〔メモを読む〕M さんは52歳女性,2人のお子さんがいて,銀行に勤めています。5年前,人間ドックをきっかけに肺がんの診断となり,当院呼吸器病センターで右葉切除術,縦隔リンパ節郭清を受けています。stageⅢaでした。

海外事情
自分らしく生きるための支援―英国がん患者支援施設 マギーズ・センターの視察より

 がん患者支援施設の英国マギーズ・センター(Maggie’s Cancer Caring Centers;以下,センター)では,がん専門相談員(以下,相談員)や心理療法士による情報提供によって,精神面・金銭面での相談支援や,実践的な参加型プログラムが提供されている。患者やその家族は,誰でも予約なしに無料ですべての支援を受けることができる。