「患者に真実を告げず家族が非現実的な希望を語っています…どうしたらいいのでしょうか」
「患者さんに本当の病状を伝えるべきではないでしょうか」と家族に投げかけても,頑なに拒否されてしまいます。隠しごとをしているせいで,患者さん自身とのコミュニケーションもうまくとれません。
「患者に真実を告げず家族が非現実的な希望を語っています…どうしたらいいのでしょうか」
「患者さんに本当の病状を伝えるべきではないでしょうか」と家族に投げかけても,頑なに拒否されてしまいます。隠しごとをしているせいで,患者さん自身とのコミュニケーションもうまくとれません。
<症例>
B氏,60歳代後半,男性。
検診で異常を指摘され受診し,食道がんcT1bN1M0, stageⅡb期と診断された。①術前化学療法+手術,②化学放射線療法を提示され,②を選択。FP-R(CDDP:シスプラチン,5FU:フルオロウラシル,放射線治療:50.4Gy/28fr*)予定。
しゃっくりは,「繰り返す不随意な横隔膜の反射性の収縮とそれに引き続く突然の声門閉鎖」のことである。急激な吸気のあとに,突然の声門閉鎖が起こるため,特徴的な音(ヒック音:“hic”sound)を伴う。通常,数秒から数日程度の持続時間であるが,48時間以上続くものを「持続性吃逆(persistent hiccups)」,1カ月以上持続するものを,「難治性吃逆(intractable hiccups)」という。持続性/難治性吃逆の場合は,器質的疾患の可能性を考える。
<事例>
患者  Bさん,60歳代半ば,男性。妻と2人暮らし。子どもはいない。
家族  【妻】60歳代前半。Bさんの診断前から,うつ病にて近隣の病院に長期通院中で投薬治療を受ている。
    【実母】90歳代。遠方に独居で生活している。
経過  膵がん,がん性腹膜炎。昨年の診断時にすでに手術適応はなく,医師から,化学療法を行ったとしても残された時間は短いと説明を受け,外来にて2nd lineとなる化学療法を継続中であった。しかし3週間前から,倦怠感と腹部膨満感,食欲低下が増悪し,臥床している時間が多くなった。
1週間前頃からは,見当識障害や昼夜逆転傾向がみられ始め,経口摂取量も低下したため,3日前に全身状態管理目的にて緊急入院となった。せん妄と診断し,治療を開始したあとは,比較的意識清明で,疎通良好な時もあるが,見当識障害が著しく,意思疎通はほとんど図れないことのほうが多い。
Bさんは膵がんが診断された時から「とりあえず病気のことを母には言うな」と妻に話していた。残された時間が少ないことを感じた妻が,『このままBさんの病気や病状を義母に言わないままでいいのだろうか』と悩み,介入中の緩和ケアチームに相談してきた。
今月のKey Article
Hardy J, Quinn S, Fazekas B, Plummer J,Eckermann S, Agar M, Spruyt O, Rowett D,Currow DC:Randomized, double-blind,placebo-controlled study to assess the efficacyand toxicity of subcutaneous ketamine in the management of cancer pain. J Clin Oncol 30:3611-3617,2012
オーストラリアのPaCCSと呼ばれる活動性の高い緩和ケアの多施設臨床試験チームの企画した,複数の無作為化比較試験のうち,最初に報告されたものです。腫瘍学雑誌としてトップクラスの『Journal of Clinical Oncology』に掲載されて話題となりました。
日本で初めてのホスピスプログラムは,1973 年に淀川キリスト教病院で始まった。当時の日本の医療は,いわゆる延命中心の医療で,末期のがん患者は,がんそのものの苦痛に加えて,最期まで投与される抗がん剤の副作用による苦痛という,二重の苦痛を背負わされていた。
● 化学療法やオピオイドの説明をする時,副作用の強調しすぎに注意。
● 副作用があると信じ込むと,その副作用がより強く出現する,ノセボ効果。
● 治療の効果を高めるために,リスクよりまずベネフィットを強調。
● オピオイドは,おもに中枢神経に働いて痛みを感じなくする。
● オピオイドの副作用の眠気をドネペジルで改善できるかもしれない。
● 知っておくべき眠気の対処法5つ。
  ①オピオイドの減量,②オピオイドのスイッチング,③ドネペジルの投与,④ドネペジルの減量,変更,⑤ペモリンの投与。
● 皮下点滴が落ちない時,むくんだ時は,針先のケアと微調整を試みる。
● 発赤や不快感がある時は,刺し替えのサイン。
● 針の位置と向き,固定でQOLが変わる。
●末梢ルート確保困難な時に,皮下点滴を知っておけば患者も,家族も,医療者も負担が減る。
● 輸液の選択には浸透圧比に注意する。
● 在宅でも皮下点滴は大きな味方。家族のご協力と,道具の工夫が必要。
● 家族との話し合いは最初が肝心。皮下点滴の意義をみんなでよくディスカッションする。
本稿では,これまでの現場の使用経験を,広く本誌 編集同人(p.82に一覧あり)に募り,実際に経験した or 目にした,粘膜吸収性フェンタニルの“危険な”使い方に関して読者の皆さんと共有することによって,今後のより適切かつ安全な粘膜吸収性フェンタニルの使用につなげられればと思います。
 2013 年に,日本においてフェンタニルクエン酸塩(以下,フェンタニル)の口腔粘膜吸収性剤が2 種類発売され,これらは即効性オピオイド薬(ROO;rapid onset opioid)と表現される。ほぼ同時に発売されたことから,各施設においてはどちらを採用するかで検討が重ねられている。
 
 なぜ,検討が重ねられるかについては,両剤はほぼ同じ効果が得られるのに対して,製剤学的特徴や薬物動態が異なることから,一部の患者にとっては有利・不利があることも一因であると考える。
 
 本稿では,製剤学的,あるいは体内動態などの差異と,筆者の少ない経験について述べる。
 アブストラル®舌下錠(アブストラル®)/イーフェンバッカル錠(イーフェン)は,これまでにない画期的なオピオイドとして登場し,今後の活躍が大きく期待されている薬剤であるが,在宅で使う時には,さまざまな問題点も抱えている。後で述べるタイトレーションの問題が最も大きいが,それ以外にも,
使用してみると,取り扱い上,次のような問題点が挙げられる。
2013 年,口腔粘膜吸収性フェンタニル製剤(以下,粘膜吸収性フェンタニル)が使用可能になったが,このユニークな製剤を臨床でどう使用すべきか,議論がなされている。
 本稿では,筆者の日米での臨床経験を踏まえ,鎮痛効果の速い立ち上がりという利点を有する粘膜吸収性フェンタニルと,オピオイドの注射製剤(おもにPCA〈patient-controlled analgesia:患者自己調節鎮痛〉ポンプ)を比較し,日本の突出痛治療の現状と今後の課題について考えてみたい。
口腔粘膜吸収性フェンタニル製剤(以下,粘膜吸収性フェンタニル)は,rapid onset opioid(ROO)として,わが国ではバッカル錠(fentanyl buccaltablet;以下,イーフェン)と舌下錠(fentanylsublingual tablet;以下,アブストラル®)の2 剤があるが,これらを「使いにくい」と感じている医療者は多いのではないだろうか?
 予測できる突出痛に対して,誘因が避けられない場合には,レスキュー薬を予防的に投与する方法があり,日常臨床では広く行われている。しかし,口腔粘膜吸収性フェンタニル(以下,粘膜吸収性フェンタニル)に限らず,レスキュー薬の予防的投与法については確立した方法はなく,明確なエビデンスがあるわけではない。
 
 本稿では,筆者が経験した症例を紹介しつつ,既存のガイドラインなどを中心に,粘膜吸収性フェンタニルを予防的に投与することの是非を論じてみたい。
本稿では,突出痛の治療のうちレスキュー薬について,歴史的背景からさかのぼって,現在の口腔粘膜吸収性フェンタニル(以下,粘膜吸収性フェンタニル)の位置づけをまとめる。
昨年(2013年),わが国でも2種類の口腔粘膜吸収性フェンタニル製剤(以下,粘膜吸収性フェンタニル)が発売された。この製剤の最大の特徴は,フェンタニルの脂溶性の高さから,口腔粘膜吸収率も高く,効果発現が速く,持続時間が短いという点にある。経口モルヒネや経口オキシコドンの速放性製剤であるSAO(short-acting opioids)製剤に対して,ROO(rapid-onset opioids)製剤と呼ばれ,その「正式な」適応は「強オピオイド鎮痛剤を定時投与中の癌患者における突出痛の鎮痛」である。
最近,わが国でも口腔粘膜吸収性フェンタニル製剤(以下,粘膜吸収性フェンタニル)が使用できるようになり,突出痛に対して「どのように治療するか?」ということとリンクして,突出痛という症状を「どう捉えるか?」ということが重要となっている。
本稿では,突出痛の概念を整理し,その臨床的な特徴を述べる。
わが国では,緩和ケアに関する新たな施策が次々に定められ,医療現場ではその実施が求められている。
2012 年に見直しがされた「第2 期がん対策推進基本計画」により,5 年間のがん対策の方向性が示された。その方向性に基づき,厚生労働省は「緩和ケア推進検討会」を設置し,わが国における緩和ケアに関する課題を明らかにし,その解決に向けた取り組みについて議論を重ねてきている。
その議論は,2013 年8 月にとりまとめられ,その内容は2014 年1 月に厚生労働省から示された新たな「がん診療連携拠点病院等の整備に関する指針」に反映されている。この指針には,「緩和ケアセンター」や新たな緩和ケアの提供体制のあり方が多く記載されており,ここから政府が目指している今後の緩和ケアの方向性を読み取ることができる。
本稿では,現場の医療福祉従事者をはじめとした緩和ケアの関係者が,それぞれの臨床現場・施設・地域で取り組むべきことについて検討していくことの参考になるよう,新たながん診療連携拠点病院(以下,拠点病院)の指針をもとに,政府が定める緩和ケアの方向性を概説する。