2013 年5 月30 日から6 月2 日に,チェコのプラハで行われた第13 回ヨーロッパ緩和ケア学会(The 13th World Congress of the European Association for Palliative Care)に参加してきたので報告する。
このデータベースは,日本在宅ホスピス協会(会長:小笠原文雄氏)の「末期がんの方の在宅ケアデータベース」に登録されている医師に対して,在宅緩和ケア対応薬局に求める機能を調査し,一方,訪問服薬指導・無菌製剤加算を算定しており,かつ麻薬小売業の免許を持っている薬局に対し,現状の在宅緩和ケアに対応できる機能(医療用麻薬の常時在庫種類など)をアンケート調査しました。その2 つのアンケート結果をもとに,表1のようなPCP に求められる機能(8項目)を研究班で抽出しました。これらの機能から,本サイトでは,条件別でも薬局を検索できるようになっています。
先日,母が満九十歳になり,家族で集まって,お祝いをしました。母は,満面の笑顔で楽しいにお喋りをしていましたが,「あれ,変だな」と感じることがありました。
緩和ケアチーム看護師:ER(救急外来)からコールです。80歳の女性で,緩和ケアを受けたいと来院した患者が,外来の受付で失神発作を起こして,運ばれたらしいんです。
緩和ケア外科医:紹介患者さん? 意識は戻ったの?
緩和ケアチーム看護師:すぐに戻りました。どうやら紹介状なしです。肺がんの診断をすでに他院で受けています。入院の順番を待っている間に,咳,呼吸困難が急速に悪化したため,当院(関東)近辺で暮らしている長男が,関西の実家から新幹線を使って連れてきたんです。
緩和ケア外科医:無茶したねぇ。とにかく行ってみましょう。R研修医も連れていきますよ。
緩和ケアチーム看護師:私も,緩和ケアの認定看護師目指して実習している看護師を連れて行きます。
中皮腫の緩和ケアに関心を高めるために
中皮腫は,症状発症からの進行が,その他のがんに比べてきわめて早い。本座談会 第1回では,中皮腫患者の身体症状や心理面の苦悩,さらに,グリーフケアの難しさなどを踏まえ,具体的にどのようなケアを行うべきか,英国・日本の実践に関する議論がなされた。緩和ケア従事者がこれまで培ってきたケアの方法が,中皮腫の患者に必須であるにもかかわらず,あまり活用されていない現状に訴えかける内容であった。
第2回は,2012年に「在宅元年」を迎えたといわれる日本の状況から,中皮腫患者の在宅療養の可能性について話が及んだ。秋山氏は,中皮腫の場合,経過が速いことを啓発し,ほかのがんと同様に,在宅医療従事者の知識・技術を底上げするとともに,先駆的な英国の経験や知識を取り入れたうえで,日本に合ったケアの体制を整えていく必要性を語った。中山氏は,関西に比べて中皮腫患者数の少ない関東では,数少ない事例から最大限に学んで,看護師間で共有したり,経験のある看護師がほかの看護師を支援したりするなどの努力が重要だとした。
英国では,1989 年に中皮腫の緩和ケアが確立され,がんなど,ほかのメジャーな分野と同じように,中皮腫に対しても治療やケアの質を保とうとしている。第一線で啓発をしてきたクレイソン氏は,在宅療養に関して,費用が抑えられる反面,人材不足が起こっている英国の経験を,日本に活かしてほしいと伝える。中皮腫に関する英国の経験に造詣が深く,看護師のための中皮腫情報サイト〔http://meso-n.umin.jp/〕の運営など,普及・啓発に努める長松氏は,今,日本に必要なこととして,支援とケアの体制を,患者・家族の視点から考えることであると提案する。
患者・家族にとっての経済的負担は,がんの治療費・療養費だけに留まらない。がんと診断されたことにより,その家庭のライフプラン,家計は影響を受ける。医療現場では,患者の医療費問題を取り上げることはできても,家計全般のことまでは取り上げることはできない。せめて,患者の抱える問題を理解したいと耳を傾け,大変な思いを分かち合うものの,現実的な解決に至らない無力感を感じるばかりだった。そんな漠然とした思いを,とある研究会の懇親会で話題にしたことをきっかけに,経済的支援に関する勉強会を始めることにした。
がん保険は,入院時の治療について医療費を補償するのが一般的であり,通院での外来化学療法を補償していないことが多い。外来で化学療法ができる時代を想定していなかった時代の契約に基づいており,医療者の目からみれば間違いなく「がん治療」であるが,「入院」していないので民間の保険の補償が受けられない場合がある。
がん対策推進基本計画(第二期)には,「がん患者も含めた患者の長期的な経済負担の軽減策については,引き続き検討を進める」と記されている。
計画書の通り検討が進み,将来的にがんに特化した費用負担軽減のため,社会資源が策定されるかもしれないが,今日この時も,患者・家族はがんを抱え,自らの経済的課題と照らし合わせながら「その人らしい」暮らしを模索している。
本稿では,医療ソーシャルワーカー(以下,MSW)が,療養生活を支援する視点や活用する資源について,事例を通して提示し,現代の多職種チームにおける役割を確認したい。
ある患者は,がん性疼痛によるADL(日常生活活動)の低下の中で,頑なに「訪問看護も訪問診療も月1 回にしてほしい」と希望していた。看護師は心配し「これほどつらいのになぜ?」と詳しく話を聞くと,「実は,経済的に余裕がないんです」と看護師に打ち明けた。それも,数日悩んでからのことであった。このように,経済的な問題は,切羽詰まった状況でないかぎり言い出しにくい問題である。
看護師は,患者の生活全般の情報を得る機会が多い。患者は経済的な困りごとについて積極的に話さないことが多いので,この問題へのアンテナを高くして関わることが重要だと思う。そのうえで,“収入ができるだけ途絶えないようにするための支援”“費用をかけるものを意思決定することへの支援”を展開していく必要があると思う。
筆者は,以前に相談支援センターの相談員として勤務し,現在は病棟看護科長として病棟勤務をしている看護師である。相談支援センターと病棟の双方の体験を踏まえ,看護師がどのように経済的な支援を展開できるのか,具体的に述べたい。
これらの新薬の開発で,全生存率や生活の質(QOL)は向上したが,残念ながら根治に至る例は,さほど増えていない。つまり,全体としての治療期間,あるいは在宅療養の期間は延長したが,その分だけ,長期にわたる支持療法,緩和ケアが必要になったともいえる。
ここで発生した新たな課題は,すべての新薬の薬価が高額に設定されているため,わが国の医療保険制度を揺るがす大問題になると同時に,患者の個人負担額も無視できない状態になってきたことである。「金の切れ目が,命の切れ目…」というような週刊誌の書き出しも,現実味を帯びる状況になりつつある。
本稿では,筆者が経験した進行前立腺がんの事例を通して,病院医師の立場から,緩和ケアを受ける患者・家族が遭遇する経済的な課題を考慮しながら,どのように治療(処置)法を選択するかを考えてみたい。
在宅療養では,入院に比べ,経済的負担に影響する要因が複雑になる。医療保険とともに介護保険を利用することになったり,家族が介護に従事するために休業したりする。経済的負担を軽減させる制度も,入院の場合と異なる部分も多い。
ここでは,在宅医療の経済的な特性を解説しながら,筆者が在宅医療の実践で,意識していること,工夫していることなどを紹介する。
都道府県がん診療連携拠点病院である兵庫県立がんセンター(以下,当院)は,地域医療者・在宅療養支援を重視した案和ケア病床を設立した。当院緩和ケア病床入院設立の2012年4月から2013年3月までの1年間の入院患者の入床経路,入院時のperformance status(以下,PS),推定予後,入院時主症状,転帰,在院日数,退院から死亡までの日数について報告する。
家族の一員が病気になった時,その病状を心配し,早く回復してほしいと願うのは,大人も子どもも同じである。病気が進行してくると,大切な家族が亡くなることや,その後のことが,家族にとって大きな問題となってくる。本稿では,親が終末期を迎える時の子どものケアについて述べる。
病棟看護師:A さん,40 歳代,左乳がん,術前化学療法,左乳房切除後です。一昨日,急に発症した激しい頭痛,めまいの精査加療目的で入院しました。
緩和ケア医:先月手術をして退院したばかりですよね。
乳腺外科医:自宅で激しい頭痛とめまいが起きて,救急受診しました。血圧上昇も認めており,頭部CT を撮ったのですが,単純で所見はなく,急遽造影をしたところ,D先生に髄膜播種を指摘されたんです。
7 月は,目で夏を感じていただく事をテーマにおやつを提供しました。
夏祭りの「金魚すくい」をイメージして,牛乳かんの上に金魚の型で抜いた寒天をあしらいました。
金魚に見えるか心配でしたが,患者さんの声にひと安心です。
King’s College London の緩和ケア修士課程を修了した2013 年1 月,2 週間の日程で,ロンドンの地域緩和ケアチームの見学をする機会を得ることができた。特に,地域のプライマリ・ケア・チームと専門緩和ケアチームの連携に,焦点を当てて見学をした。限られた期間ではあったが,それまでに大学院で学んだ英国の地域緩和ケアの現場を実際にみることができた。誌面に限りはあるが,この見学で学んだことを紹介したい。
緩和ケア病棟で働いて10年が経過した。気がついてみると,人生の折り返し地点を過ぎた年齢となった。ホスピスでのさまざまな患者さんとの関わりで,自分の心を豊かに育むことができたように思う。数えきれないエピソードの中から「声」にまつわる2つの出来事を紹介したい。
先日,横浜から,二男夫婦が二歳六か月の孫を連れて帰省しました。会うたびに大きく成長し,お喋りも上手になって可愛いさかりです。ここまでは,普通の孫自慢です。
日本における中皮腫緩和ケアの状況
日本では,中皮腫患者の数が,今後ピークを迎えようとしているが,本疾患の特性,また治療・ケアの方法について周知されているとはいいがたい。急に胸水が大量に溜まった時,「なんだろう」と診断に時間がかかってしまえば,あっという間に病状は進行し,患者はそのまま旅立ってしまう。その時,「ひょっとしてこの進行の仕方は,中皮腫かもしれない」と頭の片隅に気づきがあれば,丁寧に患者の生活歴を聞くことにつながり,中皮腫を発見できる。
また,緩和ケアの導入が遅れている背景には,中皮腫にかぎらず,“緩和ケア”の概念が患者・家族に正確に浸透していないことも挙げられる。“緩和ケア”をためらい,専門家の介入について,患者・家族が迷っている間に,病状が進行する場合もある。
患者・家族への啓発はもちろんだが,医療従事者,特に緩和ケア従事者が中皮腫に関心を寄せ,知識を得ることが,今まさに必須の時期なのである。
なお,発症原因が社会的なものであることから,患者・家族が利用できる経済的支援の制度を,医療者から伝えていくことも必要である。