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患者さんがくれた宝物
医療は,なんのために

患者さんがくれた宝物
医療は,なんのために

 秋も深まったある日,その患者さんは,「数カ月前からお腹の調子が悪い,最近痛みが出てきた」という主訴で来院された。60 歳代の女性で,まだ仕事もバリバリやっているはつらつとした方であったが,ここ数カ月はどんどん弱っていくようであった。これは単なる胃腸炎などではなさそうだ,ということでCT を撮影したところ,全身に転移がある進行がんであった。すでに食欲も低下し,全身状態も低下してきている。

 抗がん剤治療を行うことが勧められるが,このまま緩和ケアに専念することも1 つの選択肢ではある,ということも説明したところで,彼女は,「来年,末の子どもの結婚式があるんです。その結婚式まで生きられないでしょうか。それまではなんとか頑張りたい。仕事も辞めないで続けたい」と,抗がん剤治療を受けることを選択された。

ほっこり笑顔!季節のおやつ
かきもち

 1 月は,かき餅を提供します。
 
 おやつのイメージから,いつもは甘い味のお菓子や,喉ごしを考えて,ゼラチンや寒天を使ったお菓子を提供することが多いのですが,お茶のお供として,やっぱりお煎餅も好まれます。

◆ この文献の続きは、下記書籍からお読みいただけます。

Vol.24 No.1

緩和ケア 2014年1月号

¥1,500(税別)
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特別収録 エキスパートに聞くスピリチュアルケアの醍醐味
〔前編〕ニューヨークの大規模ホスピスにおけるチャプレンの役割

 ニューヨーク訪問看護サービス・ホスピス緩和ケアのスタッフは,現在320 人います。年間の患者数は,ニューヨーク市全域(5 地区)で900人あまりです。チャプレンは,総勢16 人ほどです。私は,マンハッタン中央部から南の患者さんをおもに担当しています。

 在宅が主体ですが,症状緩和のために施設に移行することもあります。その場合,施設担当のチームが,その患者さんを担当することになります。ただ,患者さんとの人間関係がすでにできている場合,病状に加えて生活環境の変化が負担となっている患者さんに対しては,なるべくサポートの一貫性を保つため,施設のスタッフと協力しながら,その方への訪問を続けるようにしています。

いのちの歌
心かろやかに

新年を迎え,今年の目標を決めました。「ホームソーイング」にチャレンジしてみようと思っています。

画像で理解する患者さんのつらさ
お腹が張って,おしっこも出ません!

・夜間当直帯の救急外来にて

WOCナース:R先生,今晩の救急外来担当ですよね。消化器外科の患者さんが救急車で来院されました。診察,お願いします。

緩和ケア科研修医:了解です。状況を教えてください。

WOCナース :A さん,70 歳代男性,肛門がんで,7 年前にMiles 手術を当院で受けています。以降,ストーマ外来で私が担当していました。2 カ月前から食欲低下があり,1 週間くらい前から下腹部膨満感が悪化し,本日夕食後に我慢できなくなったということで,来院されました。歩行可能ですが,相当苦しいみたいでいつもの表情とまったく違っています。

実践レポート
多職種参加型の高齢者終末期ケア・ワークショップの効果─参加者アンケートの結果から─

 高齢者に可能なかぎり,住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるように支援するためには,日頃から地域の多職種が学習会などで集い,情報共有できる「顔の見える」関係性をつくっておく必要がある。

 しかし,地域における高齢者の終末期をテーマにした,多職種参加型学習プログラムの実践と,効果検証を行った取り組みや研究は,ほとんどない。そこで今回,筆者らの経験を生かして,多職種参加型高齢者終末期ケア・ワークショップを企画・開催し,意義や効果を検証したので報告する。

CURRENT ISSUE
「緩和ケアセンター」の概要と現状・将来的な展望について

「基本計画」では,拠点病院を中心に,緩和ケアを迅速に提供できる診療体制を整備するとともに,緩和ケアチームや緩和ケア外来などの専門的な緩和ケアの提供体制の整備と,質の向上を図ることが求められている。そのため,今後,チーム医療や外来を含めた診療の質の向上を目指し,緩和ケアの提供体制について,院内組織基盤の強化を図る必要がある。

 また,専門看護師や認定看護師などの資格認定制度が導入される一方,現場では病棟配置により限定的な活動にとどまるなど,人材の適正配置が行われておらず,人的資源が有効に活用されていないことが指摘されている。

 こうしたことから,現在,すべてのがん患者やその家族らに対して,より迅速かつ適切な緩和ケアを切れ目なく提供するため,これまでの緩和ケア提供体制をさらに強化した「緩和ケアセンター」の整備に取り組んでいる。

再発・進行がん患者の治療中のサポーティブケア
化学療法のインフォームド・コンセントと副作用を体験した1人の患者から

 26 歳だった1997 年秋から2000 年夏にかけて,肺に広く転移した精巣腫瘍のため,2 度の再発を含めて計10 クールの化学療法を受けた。

 あの頃に比べると,研究者から臨床の現場まで,化学療法や放射線治療の副作用への関心が高まり,副作用が少ない薬や補助療法の薬が開発されていることを心から嬉しく思う。

 本稿では,化学療法を実際に受けた患者の立場で,インフォームド・コンセント,副作用の体験などをまとめてみようと思う。体験手記をまとめた拙著『がんと向き合って』(朝日文庫)を含め,類似の報告をしたこともあるが,今回は特にインフォームド・コンセントと化学療法に絞ってみようと思う。

再発・進行がん患者の治療中のサポーティブケア
放射線治療を受ける患者のサポーティブケア

 症状緩和を目的とした放射線治療(raditationtherapy;以下,RT)は,さまざまな症状に用いられる(表1)。その中でも,有痛性骨転移に対しての放射線治療は,最もよく用いられる。

 緩和的RT での治療計画における考え方は,①照射野は小さめに,②照射期間はできるだけ短く,③急性合併症はできるだけ出さない,④分割回数を少なくする,とされている。

 根治目的のRT では,あくまでも治療完遂が最優先されるが,緩和目的のRT では,症状緩和によるQOLの維持・向上が主目的とされる。そのため,有害事象が患者の全身状態の低下に大きな影響を与えている場合には,治療中止を検討することもありうる。

再発・進行がん患者の治療中のサポーティブケア
注意が必要な支持療法薬

 化学療法の副作用に対する支持療法において問題となるのが,①推奨治療でない,②治療医が使用経験のない支持療法薬である,③支持療法薬の使用により,化学療法の効果への影響に関する懸念がある,④支持療法の副作用に対して懸念がある,⑤支持療法薬について情報が不足している,などが挙げられる。

 そこで,本稿では,①おもな適応外使用薬剤の注意点について,②薬物相互作用について,③支持療法薬の注意するべき副作用について記載する。

再発・進行がん患者の治療中のサポーティブケア
悪心・嘔吐のマネジメント

 化学療法に伴う悪心・嘔吐のマネジメントは,制吐薬の開発と,適正使用のためのガイドラインが整備されたことにより,改善がみられるようになった。しかし,再発・進行がん患者が治療中に体験する悪心・嘔吐は,抗がん剤の直接作用のほかに,複数の要因が重なって生じていることが多い。

 また,悪心は本人にしか分からない主観的な体験であり,患者が置かれている状況の中で,単に症状というだけでなく,さまざまな意味を帯びて存在している。看護にあたっては,悪心・嘔吐を体験している患者を包括的に理解した支持的ケアを提供していくことが重要である。

再発・進行がん患者の治療中のサポーティブケア
皮膚症状のマネジメント

 がん化学療法に伴うさまざまな皮膚症状は,患者の身体的な苦痛だけでなく,ボディイメージを変容させ,患者のQOL を著しく低下させる。再発・進行がん患者においても,皮膚症状を伴うがん化学療法は多く実施されており,がんそのものに伴う症状に加えて,皮膚症状のマネジメントも
重要とされる。

 発症の機序は不明な点が多く,推奨される介入も少なく,専門家の経験に基づく治療が行われている現状があるため,症状を悪化させないためのスキンケアに加え,その症状に合った治療が求められる。今回は,特にマネジメントに苦渋するEGFR(上皮増殖因子受容体)阻害薬に伴う皮膚症状に焦点を当てて解説する。

再発・進行がん患者の治療中のサポーティブケア
がん化学療法を受ける患者の副作用症状の緩和とその考え方についての一考察

 がん化学療法を受ける患者は,2 つの苦痛を被る。1つは「がん」に起因する苦痛であり,もう1つが「化学療法」に起因する苦痛である。そして,この2つの苦痛は,互いに密に関係し合っている。

 治療中の再発・進行がん患者を全人的に診ようと考えるのであれば,この2 つの苦痛を切り離して考えることはできない。なぜなら,がんに起因する苦痛そのものに対して,化学療法が行われているからである。最適な化学療法は,より良い症状緩和をもたらす。そして,最適な化学療法を行うためには,十分な副作用対策がなされていなければならない。化学療法を受けている患者に対して緩和ケアを実践することを考えるのであれば,まず,がん化学療法について十分な理解をしていただきたい。

 本稿では,がん化学療法を受ける患者の副作用症状の考え方について,考察してみる。

再発・進行がん患者の治療中のサポーティブケア
再発・進行がん患者のサポーティブケアとしての副作用マネジメント

 再発・進行がん患者のサポーティブケアを継続的に行うためには,脳・骨転移の放射線治療も不可欠である。化学療法と同時に,また休薬して実施されることが多いが,患者の中では,治療に伴う症状は混在して出現するため,医療者が両方の基本的なマネジメントの知識と技術をもつことが,サポーティブケアに寄与すると考えている。

 まず,特集のはじめにあたり,化学療法の副作用マネジメントについて,その限界を踏まえ,認識を共にしたい点について考えてみたい。

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Vol.24 No.1

緩和ケア 2014年1月号

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らしんばん
病院でも在宅でも継続して! やれることはなんでも!―若手緩和ケア医のわがまま―

 私は,かつて短い内科経験だけで,緩和ケアの世界に飛び込んだ。医師になってまだ8 年の若輩者。内科医として化学療法を行っていた頃は,治療効果が出れば患者さんと共に喜び,思うようにいかない時は共に悲しんだ。終末期も可能なかぎり全力を尽くしたが,無力さを実感する日々であった。

 しっかり緩和ケアを学ぼうと考え,亀田総合病院で,関根龍一先生のもと,2年間研修させていただいた。症状緩和の技術に加え,緩和ケアチームの活動を通じて,時間をかけて患者さんと,継続した関わりをもつことの大切さを学んだ。関わりを通じてみえてきた,その方に必要な癒しを得るためには,なんでもやらせていただけた。入院中の末期がんの方を温泉に連れて行ったり,歩く勇気が出ない方のリハビリに毎日付き添ったり,今でも多くの思い出が蘇ってくる。

海外事情
米国中西部ウィスコンシン州のホスピス・緩和ケア事情

今回,相互訪問を行っている千葉ウィスコンシン協会(Chiba ― Wisconsin Association)の千葉県立保健医療大学として初めて加えていただいた。10 月12 日〜10 月19 日までの短期滞在ではあったが,米国人家庭にホームステイしながら,ウィスコンシン州における保健・医療に関する現地視察の機会を得た。ホスピス・緩和ケア事情にも多少触れる機会があったので,ご報告申し上げたい。

死を意識した時に何を語り合うか ─苦痛と苦悩の中にある人間理解とセルフ・アウェアネス
終末期患者へのスピリチュアルケア―“患者のリアリティ”と“援助者のリアリティ”―

 筆者は,「スピリチュアルペイン」を特定しそれを取り除くというスピリチュアルケアのイメージをもっていない。なぜなら,仏教的に言えば「生」そのものが苦であり,ユダヤ=キリスト教の伝統に従うならば,すべての人間は罪人である。人間は,本質的に悩み苦しむ存在である。そして同時に,その存在が喜びや幸せを感じる主体でもある。スピリチュアルケアは,患者がこれらを十分に経験し,自分なりの意味づけを見出すことに同伴するケアであって,問題を解決するケアではない。

死を意識した時に何を語り合うか ─苦痛と苦悩の中にある人間理解とセルフ・アウェアネス
死の不安を秘めた患者との関わり

 がんと告げられた時,人はまず何を思うのだろうか?「まさか,私が?」ということが頭の中で駆け巡り,うろたえ,真っ白になるのであろう。そして,それまで当たり前であった自分の存在がなくなってしまうこと,つまり「死」を意識するのである。

 しかし,それはあまりにも孤独であり,恐怖を伴うため,「死」に対して意識を向けないように生きていくのだろう。医師から「もう治療法がない」と告げられたあとは,必死で“生きる主体”としての自分を鼓舞することが,治療への執心,現実とかけ離れた希望をもつことにつながっているのではないかと察する。その時,医療者は何を思うのであろうか。

死を意識した時に何を語り合うか ─苦痛と苦悩の中にある人間理解とセルフ・アウェアネス
生きている意味が分からないと訴える患者との関わり

 一般に,死を目前にした患者が自分自身の生きる意味を求めようとする時,そのこころの動きに寄り添うことは,医療者にとっても難しいテーマである。そこでは,両者のスピリチュアル・ニーズ(患者のために何かしてあげたい・問題を解決してあげたいなど)が交錯し,いろいろな感情体験が生まれるからである。本稿では,「生きている意味が分からなくなった」と語った患者Aさんに対し,筆者がどのようにその言葉を理解し関わったのかを提示する中で,こうしたテーマに対する対応と留意点について考察したい。

死を意識した時に何を語り合うか ─苦痛と苦悩の中にある人間理解とセルフ・アウェアネス
呼吸苦痛の強い終末期がん患者との関わり

 新潟県立がんセンター新潟病院は,2007 年1月都道府県がん診療連携指定病院に指定され,緩和医療の提供・整備を行ってきた。2009 年5 月に緩和ケア科外来が開設されたが,緩和ケア病棟を有しないため,がん患者は一般病棟で終末期を迎えている。

 筆者は,消化器内科病棟に所属し,実践・指導・相談を行っている。病棟外のコンサルテー
ションに対応し,院内外の教育にも力を注いでいる。がんカウンセリングや意思決定支援,スタッフのメンタルサポートなど多岐に渡り緩和ケア認定看護師の役割を担っている。

 以下に,がん告知から治療期を経て終末期を迎えるまで,筆者が自問自答しながら関わりを続けた事例を紹介する。