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生活をみる!放射線療法の看護ケア〈3〉
肺がんの陽子線治療を受ける患者の看護―肺炎,食道炎へのサポートが重要

生活をみる!放射線療法の看護ケア〈3〉
肺がんの陽子線治療を受ける患者の看護―肺炎,食道炎へのサポートが重要

症例

C氏,70歳代,男性。
肺がん(cT1aN0M0)と診断された。COPD(慢性閉塞性肺疾患)や,糖尿病などの既往があるため,手術は難しいと言われ,陽子線治療を勧められた。

生活の状況は,1人暮らしであり,同じ敷地に長男家族(長男夫婦,4歳・6歳の孫)が住んでおり,夕食は晩酌しながら,息子夫婦宅で摂取している。医師や看護師の説明は理解できるが,忘れっぽいところがある。症状は,時々咳嗽がある。30年間,40本/日の喫煙歴があったが,COPDと診断された昨年に,禁煙をしている。しかし,軽度の咳嗽が持続している。

◆ この文献の続きは、下記書籍からお読みいただけます。

Vol.25 No.2

緩和ケア 2015年3月号

¥1,500(税別)
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家族ケアのツボ〈5〉
突然来て自分の意見を主張する家族にどう対応すればいいの…

「今まで登場しなかった家族が突然来て,意思決定のちゃぶ台返しをしてしまいました…」

 いつも面会に来ている妹さんをキーパーソンと考え,DNAR(do not attempt resuscitation)についての意思決定を進めていたのに,突然来たほかの家族が,これまでと違う意見を強く示しています。このまま,妹さんと患者さんと,穏やかに意思決定が進むと思っていたのに…。

エシックスの知恵袋〈3〉
末期患者さんの希望が害をなす医療行為だったら…

患者 
Cさん,70歳代前半,男性。発症前は,自営業で行ってきた仕事に誇りをもち,入院後も,事業のことが気になっている。本来は穏やかな性格だが,苦痛が強い時には声を荒げる場面もある。

家族 
60歳代後半の妻と2人暮らし。独身の長男が隣県に在住。

経過
胃がん,肝転移,腹膜播種。1カ月前にBSC(best supportive care)となっていた。その後,徐々に腹水が溜まり始め,外来にて利尿剤が処方され,経過をみていた。しかし今回,腹水による苦痛が増悪し(1カ月で体重5㎏増加),経口摂取低下,ADLの低下も認められたため,腹水コントロールと,今後の療養環境調整目的にて,入院となった。
入院後,利尿薬の変更を行ったが,コントロールがつかず,腹部膨満感の苦痛が強かったため,3日目に腹水穿刺2,500mLが行われた。腹水穿刺後は,食事摂取量も一時的に増え,笑顔がみられるようになった。
その後もCさんは,腹水による腹部膨満感が強くなると,腹水穿刺を希望され,7日目には2,500mL,10日目には3,000mLの腹水穿刺が行われ,12日目には残務整理のため,半日の間,外出(帰宅)することができた。この時,主治医からは,残された時間に限りがあるため,やれることはやっておいたほうが良いと告げられている。15日目に,再度Cさんは,腹水穿刺を希望したが,採血の結果,著明な腎機能低下(尿素窒素60.2 mg/dL,クレアチニン 1.8mg/dL)と電解質異常(ナトリウム123mEq/L,カリウム 6.5mEq/L)が認められた。主治医は,最悪の場合,死期を早める危険性があるため,これ以上腹水穿刺は行わない方針とした。しかしCさんは,リスクを承知のうえで,「腹水穿刺をして苦痛を緩和してほしい」と訴え続けた。Cさんの妻と長男は「本人のつらさがとれるなら,望むようにやってあげてほしい」と希望しており,プライマリーチームとして,このような状況にどのように対応したらよいか,緩和ケアチームに相談があった。

緩和ケア口伝―現場で広がるコツとご法度〈2〉
緩和領域におけるせん妄患者にクエチアピン(セロクエル®)

 本稿を読まれた方々においては,せん妄患者に対し,鎮静を目的に安易にベンゾジアゼピン系薬物のみで対応することは,今からやめていただきたい。ベンゾジアゼピン系薬物の単独投与が,せん妄を悪化させる「エビデンス」についてはそれこそいくらでもある。

緩和ケア口伝―現場で広がるコツとご法度〈2〉
黄疸や体表のがんがある方へのエンゼルケアのポイント

〔1〕 黄疸の患者のエンゼルケア

 皮膚の色を自然に見せるために,黄色のコントロールカラーや,病棟にあれば真っ黄色のファンデーションを下地として使用し,肌色のファンデーションを重ねると有用なことがある。後者はエンゼルメイク用に市販されている。

緩和ケア口伝―現場で広がるコツとご法度〈2〉
この薬,皮下投与でも使えます!―安城厚生病院 緩和病棟の場合

 安城更生病院 緩和病棟では,経静脈的によく使用されている輸液・薬剤を,皮下投与時の安全性の面で6段階に分類した表を作成し,使用している(表1:掲載にあたり,実際に使用している6段階から,使用可能な3段階の薬剤一覧に改変した)。その中から,皮下投与の適応がないが出番の多い薬剤について,説明する。

緩和ケア口伝―現場で広がるコツとご法度〈2〉
皮下点滴による抗菌薬治療について

 抗菌薬の皮下点滴に関する文献レビューでは,セフトリアキソン,セフェピム,アミカシン,ゲンタマイシン,テイコプラニンの報告があるが,欧州で皮下点滴の認可があるのは,フランスにおけるセフトリアキソンとアミカシンのみだった。緩和ケアや高齢者診療などでは,以下のような臨床報告に依拠して,抗菌薬の皮下点滴が行われている。

FAST FACT〈2〉
かゆみ(掻痒)

 かゆみは,かきむしりたくなるような衝動を引き起こす不快な感覚である。慢性的なかゆみは,睡眠障害や気分障害(うつ病・不安)と関連し,QOLを低下させる。

いま伝えたいこと―先達から若い世代に<2>
「ペーシエントからパースンへの挑戦」に価値をおいて

 1960年代,大学病院のナースだった頃,終末期がん患者の痛み治療は,急性期のそれとまったく同じで,オピオイド製剤の筋肉内注射でした。注射ですから,吸収は速いのですが,血中濃度は中毒域にまでになりますので,患者は眠ってしまいます。排泄も速く,目覚めると,また痛みとの闘いです。すがるように「注射をしてください」と訴える患者の背中をさすりながら,一緒に泣くしかなかったこともありました。強い痛みの中で,のたうちまわっている姿は,まさしく拷問を受けているように見えたのです。

 あの頃体験した無力感や,ナースとして何もできずに途方に暮れていた経験は,私が,ホスピス・緩和ケアの道に導かれたひとつの原点でもあったように思います。

緊急収録
安楽死・医師による自殺幇助―緩和ケアの臨床家が知っておくべき知識

2014年秋,ブリタニー・メイナードさん(写真1)が脳腫瘍のために「安楽死」をするという予告動画をyoutubeに掲載し,話題となった。29歳という若さ,結婚してほどなくの発症も報道の加熱をいくらか後押ししたに違いない。国内の報道では,しかし残念ながら,医学的な認識そのものが正しくなく,議論が深まらないものが多かった。本稿では,緩和ケアに携わる臨床家が知っておくべき安楽死に関する知識をまとめる。

終末期の身の置き所のなさの緩和ケア 「身の置き所のなさ」のピットフォールとコントラバーシー 〈4〉
精神的苦痛・いわゆるスピリチュアルペインによる「身の置き所のなさ」に対する鎮静の是非

 本稿では,精神的苦痛による「身の置き所のなさ」に対する鎮静について,その是非や留意するべき点などを論じる。ただし,精神的苦痛の中でも,疎通を図ることが難しいような過活動型せん妄に対する鎮静については,本稿では主題としない。

終末期の身の置き所のなさの緩和ケア 「身の置き所のなさ」のピットフォールとコントラバーシー 〈3〉
「倦怠感」「身の置き所のなさ」にオピオイドの投与はありか・なしか

 「寝たきりの患者さんの倦怠感にモルヒネを投与するというのは,どう思いますか?」

 筆者がかつて働いた緩和ケア病棟の看護師から,久しぶりにメールが来た。メールをくれた看護師もまた,緩和ケア病棟を離れ,別の地域のホスピスで働いている。また別のホスピスで働く看護師からも,ほぼ同時期に「新しく赴任したドクターは,がんの倦怠感,特に“身の置き所のなさ”を訴える患者さんに,少量のモルヒネが効くと言って投与するのだが,本当にこういう方法は“あり”なのか」とメールが来た。筆者は,「倦怠感」「モルヒネ」という話に,2つのことを思い出した。

終末期の身の置き所のなさの緩和ケア 「身の置き所のなさ」のピットフォールとコントラバーシー 〈2〉
死亡直前の魂の叫びとしての「身の置き所のなさ」─mental anguishへの薬物以外の対応

 人は有限の生を生きていることを十分に理解しているにもかかわらず,一人称である自己の死が避けられないことを感じ取った時,「なんでこうなったんだ」という「Why me?」の苦しみを強く感じる。そして,この苦悩は,自己の死の存在を明確に認識した時に,「身の置き所のなさ」として表現されることがある。

 本稿では,「死が間近に迫った患者の魂の叫びとしての身の置き所のなさ」への対応について,筆者の経験から具体例を示し,その対応について考察する。

終末期の身の置き所のなさの緩和ケア 「身の置き所のなさ」のピットフォールとコントラバーシー 〈1〉
身体変化の初期症状としての「身の置き所のなさ」

 「身の置き所のなさ」が意味するところは,単一のものではない。単なるせん妄であるわけでもなく,それにはさまざまな原因があることは,これまでの項で述べられた通りである。一般に,がんに伴い,さまざまな側面の苦痛・苦悩がみられるが,がん制御困難となった終末期に,これらが形容しがたい全身的な苦痛としてがん患者を苦しめ,身の置き所のなさとして表出してくる。全身の不快感のために,穏やかに寝ていられないことが多い。

 そして,それらには予防できるものとできないもの,可逆的なものと不可逆的なもの,症状緩和できるものと困難で鎮静を要するもの,など多様な観点とアプローチで取り組むことが求められる。

仕事人の楽屋裏〈1〉
明智龍男 

愛知県内の公立大学病院で,精神腫瘍医そして精神科医として働いています。大学ですので,臨床のほかに,教育と研究にも従事しています。緩和ケアチームでは,幸い素晴らしい仲間に恵まれ,忙しいながらも充実した日々を送っています。